わからないことだらけのウイルスへの不安はどうしたらいい?
2020年5月20日

わからないことだらけのウイルスへの不安はどうしたらいい?

自粛生活が続く今、「家族が新型コロナウイルスに感染したらどうしよう」「子どもを守らなければ……」と自分を追い込んでしまうママが増えているよう。休園、休校の期間が長くなり、社会とのつながりが持てないことも大きな負担に。

そこで、「見えない不安や悩みとどう付き合えばいいのか」というテーマで育児支援オンライン講座を行った、NPO法人日米心理研究所のみなさんのお話を、代表の西澤奈穂子先生に聞きました。

24時間子どもと一緒の生活で心が脆弱に。不安を受け止めて、距離を取ることで安定

ーーそもそも、このような状況下でママがいつも以上に不安を持ち、しんどく感じてしまうのはなぜなのでしょうか?

コロナはわからないことが多く、対策や予防についても正解がないので、不安に感じるのは当然。もともと、お母さんには子どもを守らなければいけないという責任があるので、今のような緊急時には、平時よりも責任感を強く感じてしんどくなるのは仕方ないと思います。

加えて、登園・登校ができず、子どもと24時間一緒に過ごす生活に慣れている親は少なく、また、他人と離れなければいけないという環境は、非常に心に負荷がかかります。人とアイコンタクトが取れない、というだけでも心ってすごく疲弊する。今は、ママの精神の脆弱性が生まれやすい要素がたくさんあるんですね。

ーーこの状況で不安を感じたり、気持ちが落ち込むのは当たり前のこと! そんな中で、不安に立ち向かい、少しでも前向きな心を持つためにはどうすれば?

まずは、わからないことはわからないと受け止める。わからないとどうしてもパニックに陥りがちですが、不確かなことをしっかり認めることも強さなんです。その上で、できること・できないことを見極めてそこにきちんと境界線を引くこと。今なら、手洗い・うがいなどの自分でできることをしたら、それで良しとして気持ちを切り替えましょう。自分でどうにもできないことを考え出すとキリがなく、心も落ち込んでしまいます。

子どもは親を見て学び、真似をするので、ママが動揺していると子どもも不安になります。大切なのは、ママの心が安心・安定していること。それはぜひ忘れないでほしいなと思います。

今に目を向ける「マインドフルネス」がママの心の安定の助けに

ーー心を安定させるためには、どうしたらよいでしょうか?

最近よく言われているのは、「不安は未来を生きることで生まれ、うつは過去を生きることで生まれる」ということ。マインドフルネスは、今この瞬間に目を向けようというものです。今できることに集中して、自分の認知を整えることはとても有効だと思います。落ち込んでいると、どうしても過ぎたことが気になったり、これから起きるかもしれない事態を心配しがちですが、そんなときは深呼吸をして「今ここ」に戻る。家族が元気で一緒にいられる今に意識を向けて、他のことは今はいいや、と手放せるといいのかなと思います。

マインドフルネスの考え方を生かした、コロナ危機への効果的な対応方法(FACE COVID)があるので、気になる方はぜひこちらをチェック。
http://www.jupinpo.org/pdf/FACE-COVID_eBook_JP_by_Russ_Harris-Japanese_version.pdf

体を動かすことでオキシトシンを分泌。心と体をつなげてくれる!

ーー他にも、気持ちを落ち着かせるよい方法はありますか?

もうひとつ大切なのは、体を動かすことです。運動することで、オキシトシンシステムが構築するという研究結果もあるようです。また、ヨガが大人も子どもも不安やうつを低減すること、メンタルヘルスによい影響があることは広く知られています。子どもと一緒にできるヨガもいろいろあるので、家で一緒にやってみるのもよいのでは。また、人と会えない今、ひとりでできるエクササイズはとてもおすすめで、特に、体の左右を交互に両方使う動きは、左右の脳をつなげる効果があるので◎。規則性のある動きのエクササイズやダンス、あとは散歩もリズムがあるのでとてもいいですね。

子どもも、運動で心の安定を得ることは同じなので、ぜひ時間を決めて外遊びをさせてあげて。周りの厳しい目もあるとは思いますが、遊具を一緒に使わない、一定の距離を取るなどルールを守れば、公園遊びは問題ないと思いますよ。

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次回は、ママにとっての「一番の敵は夫?」についてです。

取材・文/野々山幸(TAPE) Photo by Adobe Stock

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西澤奈穂子さん

にしざわなおこ/NPO法人日米心理研究所(JUPI)理事長・臨床心理学博士・アライアント国際大学カリフォルニア臨床心理大学院准教授。日本とアメリカを行き来しながら、子どもと家族の臨床心理の研究や障がいのある家族の支援、子どもの虐待防止活動などを行う。ママを対象とした「ACTすこやか子育て講座」も。http://www.jupinpo.org/

JUPI事務局メンバー:伊藤晶子(育児支援プログラムの企画・実践や海外の文献や資料の翻訳)、粕谷真由美(育児支援プログラム、日本語学校の教員、及び心理カウンセラーとして留学生の心理支援)、鶴巻香奈子(小児看護専門看護師)、佐久間綾子(臨床心理士、公認心理師。専門はトラウマケア)

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