藤井聡太さんの子ども時代の過ごし方、育てられ方。天才はこうして育つ!
若くして才能を発揮させ、大活躍している将棋棋士の藤井聡太さんや野球選手の大谷翔平さん。彼らの子ども時代の過ごし方、育てられ方に、今の成功の秘密が隠されているかも……。今回は、藤井聡太さんの小さいころの習慣に注目。子育て本を多数執筆する、立石美津子さんのコメントと一緒にご紹介します。
プロ棋士
藤井聡太さん
ふじいそうた/2002年生まれ。愛知県出身。5歳のときに祖母が盤駒セットを買い与えたところ、祖父母をすぐに負かすようになり、地元・瀬戸市内の将棋教室に入会。2016年9月、史上最年少の14歳2か月で四段に昇段し、プロ入り。それから2年足らずの2018年5月には最年少で七段昇段。記事公開時の2021年11月21日時点では四冠。
知育系おもちゃ・遊びに触れる
幼いころから将棋のほかにも、折り紙やキュボロ、囲碁など、指先をたくさん使う遊びをしていたようです。
●「中でも『ハートバッグ』という数色の色画用紙を格子状に組み上げ、ハート形のバッグに仕上げるという遊びにはまった。毎日、毎日、朝から夕方まで作り続け、それは聡太の“お仕事”となった」(『将棋世界』2017年8月号(日本将棋連盟)P.45)
●(キュボロについて、母の言葉)「けっこう難しくて、私は作れないんですけれど、三歳の時にぽんぽんと置いて、すごい作品を作っていたので、『ちょっとこの子、賢いかもな』って、親ばかで……」(『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(松本博文/著 NHK出版新書)P.22 )
●「祖父は将棋だけでなく囲碁も教えてくれた。5歳のころ」(『藤井聡太 名人をこす少年』(津江章二/著 日本文芸社)カラー口絵 )
「完成された玩具は瞬間的に子どもの興味を引きますが、飽きるのも早いもの。ブロックや折り紙、積み木、粘土など手を加えることで無限に世界が広がるおもちゃこそ興味関心が長く続き、能力を伸ばすことにもつながります。将棋もそのひとつですね」(立石さん)
新聞を愛読
文字や文章をよく読み、子どものころから言葉をたくさん吸収していました。新聞を日常的に読んでいると、学力も高くなることが最近の文科省の分析からも分かっています。
●「幼いころから新聞を隅々まで読み、見識を高める」(『藤井聡太 名人をこす少年』(津江章二/著 日本文芸社) P.85)
「新聞や本を読むことで、親だけでは与えることができない言葉や情報をたくさん吸収することができ、膨大な語彙の獲得にもつながります。頭の中にある言葉=内言が豊かで緻密であればあるほど、深い思考ができるのが人間です」(立石さん)
リビングにある家族の
共用PCを使用
小学2年から始めたインターネット対局や、将棋の研究ではPCを活用。自室にこもるのではなく、リビングにある家族共用のものを使っているそう。
●(本人の言葉)「学校から帰った後は、ソファで横になりながら、スマートフォンで公式戦の中継を見ることが多いです。夕食の後はパソコンの前で研究します。一日の将棋の勉強時間は、3時間ぐらいですね」
●「研究用の将棋ソフトを動かすパソコンは家族と共用」(いずれも、AERA.dot 2017年7月24日配信記事dot.asahi.com/wa/2017072100009.html)
「子ども部屋に閉じこもって、自分専用のPCや本に没頭するよりも、大人と共用することが世界を広げるきっかけに。本棚も家族共用にし、上のきょうだいの本や図鑑、大人が読む雑誌なども手に取れるようにすることで知識の幅も広がります」(立石さん)
本人がやりたいことをやらせ
親はそばで見守る
藤井さんの両親は将棋に関しては素人だったのは有名な話。あくまで本人のやりたいことをやらせ、親はサポートや見守りに徹していたようです。
●「両親の指導方針は『子どもにやりたいようにやらせる。私たちはそれを温かく見守る』」( 『藤井聡太 名人をこす少年』(津江章二/著 日本文芸社)P.85)
●「子どもが夢中になっているもの。一生懸命やっていることを、たとえ解らなくても共有したい、一緒に体験したい」(『将棋世界』2017年10月号(日本将棋連盟)P.78)
「子どものために習いごとをさせるはずが、親のほうが夢中になっていて、子どもはそっぽを向いているケースもあります。夢中になるべきなのは子ども自身です。過保護・過干渉にならないように見守ることが親にとって重要です」(立石さん)
よく泣く
負けず嫌いで、将棋に負けると盤にしがみついて大泣きしていた藤井くん。感情を抑えつけたり無理ながまんをしない。気持ちを素直に表現して伸び伸び育っていたようです。
●「いまだかつてあれだけ激しく泣く子を見たことがありません。逆にあれだけ切り替えが早い子も見たことがない」(『弟子・藤井聡太の学び方』(杉本昌隆/著 PHP研究所)P.21)
●「もう立ち直れないのではと気を揉むくらいに泣き伏しているのですが、(中略)次の手合いが始まると、もうケロっとしています。(中略)その意味では切り替えが早い。明らかにプロ向きの性格だと思いました」(『弟子・藤井聡太の学び方』(杉本昌隆/著 PHP研究所)P.19)
「激しく泣くのは “何が何でも絶対に勝ちたい”という負けん気の強さの表れ。そこで親が “泣かれては困る”と勝たせてあげるのはいい対応とは言えません。大人が真剣勝負で相手をすることで、たとえ負けても切り替えてがんばる力が育つのです」(立石さん)
コメントしてくれたのは
立石美津子さん
たていしみつこ/幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後、20年間学習塾を経営。『1人でできる子になる「テキトー母さん」流子育てのコツ』(日本実業出版社)など子育て本を多数執筆。
イラスト/柴田ケイコ 編集協力/古川はる香(kodomoe2018年10月号掲載)