子どもとのおこもりの不安を柴田愛子先生に聞きました〜コミュニケーション編〜
2020年5月22日

子どもとのおこもりの不安を柴田愛子先生に聞きました〜コミュニケーション編〜

横浜にある認可外保育施設「りんごの木」で、毎日子どもたちと触れ合ってきた保育士の柴田愛子先生。1月に配信した「言葉が遅いのはあたりまえです」から始まった3回のインタビュー記事は、とてもたくさんのママに読まれました。

今、おうち時間が長くなり、子どもとの時間が濃くなるママの不安について、あらためて柴田先生にお話を聞きました。読むだけでほっとする、おこもり中のママに贈る不安への処方箋。

「慌ただしくない」毎日を見つけたママ

――幼稚園や保育園が休園になり、おこもり生活も約3か月が経ちました。狭い社会(家庭)で過ごしていて、子どもの発育が気になります。

気になりますよね。発育については家の中だけで過ごしていると問題もあります。でも、いつの時代にも、しょうがないことはありますからね。今は、歴史的な大変化が起きているわけです。そんなときには、発育に問題があってもいい。一番優先しなくてはいけないことは命を守ることです。

そうはいっても、ママが不安で煮詰まることもあるでしょうね。今までの暮らしをしていられない状況なんだから。でも、大丈夫です。子どもには回復力があります。休園が解除されれば、どんどん回復していきますから安心してください。それまで、窮屈な家の中ではあるけれど、それぞれが自由に過ごしたらいいですよ。今の住宅は狭いですよね。子どもが隠れる隙間がありません。

私が子どもの頃も狭かったです。7人暮らしで、8畳で寝起きしていました。だから、姉は押し入れにこもってましたし、私はお風呂に、母は台所に。それぞれ好きなことができてよかったんです。不自由なりに、面白がれるといいですね。こんなときもあるよね、って。

先日、「りんごの木」の親御さんからもらった手紙に「この生活にも慣れてきました。いつもの生活が慌ただしかったということに気づきました」と書かれていました。親がいいところを探していけると、子どももいい方へ考えられますよね。発育に問題があったとしても、親がそんなふうに考えられたら大丈夫です。

子どもとのおこもりの不安を柴田愛子先生に聞きました〜コミュニケーション編〜の画像1

 緊急事態ではどんなコミュニケーションもOK

――柴田先生が「りんごの木」で書かれているブログでも話題になっていましたが、電話やオンラインなどで子どもたちが先生や友達と繋がることも必要でしょうか?

緊急事態なので電話も、オンラインもよいと思っています。特にママや大人にとっては、既に知っている友人たちと触れ合わずしてコミュニケーションを取ることはとてもいいと思いますね。ただ、1~2歳の言葉を覚え始めたばかりの子どもたちは、普段でも電話に向かって話をするのは難しいですよね。2歳くらいまでは、そもそも声を発してコミュニケーションを取ることに慣れていないんです。

とはいえ、そんな幼い子でも、オンラインで顔が見えることはコミュニケーションのひとつになるので、活用するといいと思います。ただ、覚えておいてほしいのは、オンラインでは本当のコミュニケーションは育たない、ということ。

 マスク越しのコミュニケーションの難しさ

私たちだって、マスク1枚しているだけで、壁を感じませんか? 言葉というものは、行き交いすれば通じるわけではなく、声のトーン、表情、空気感が必要です。マスクをしていると表情がわからないから、思っているように言葉は出てこないでしょうね。オンラインも同じように、ベールがあることを知っておくといいです。

画面上で人とつきあうことを体験すると、実際に会ったり、話したりする生のコミュニケーションが怖くなることがあるので、「りんごの木」では避けています。今は毎週、子どもたちに手紙を出して、お返事を待っています。もちろん、メールでも電話でも、顔を見せてくれてもいい。そんなふうにして今しかできないコミュニケーションを取っています。

子どもとのおこもりの不安を柴田愛子先生に聞きました〜コミュニケーション編〜の画像2

 子どもは「つまんない」と言いながら遊びを見つけていく

――家の中でずっと過ごしていると、テレビやゲームの時間を決めていても、守るのはとても難しいです。

テレビとかゲームは楽しいもの。大人が労力とお金をつぎ込んで作ったわけですから、ディズニーランドと同じですよね。つまらないわけがなくて、夢中になるのは当然です。ゲームには達成感もありますから、集中力は育つでしょう。ただ、自ら遊んでいるのとは全然違います。

「自ら遊ぶ」というのは、子どもが「つまんないつまんない」と言いながら「つまるもの」を見つけてくることです。遊ぶ能力を子どもは持っていて、赤ちゃんだって、手をくるくるしたり、ゴミを見つけてハイハイしていきますよね。子どもは自分で自分の遊びを見つけることができます。それに、子どもは「つまんない」で病気になることはありませんから(笑)。

テレビもゲームも見すぎては目も悪くなりますし、それなりに弊害もあります。時間を決めたほうがいいですが、それだけでは止められません。一緒にタイマーをかけるのはどうでしょうか。時間がきたことが子どももわかります。

子どものわかりかたって面白いんです。あるとき、水遊びをずっとしている子どもに「もうやめて! 水がもったいない!」と言ってもダメでした。「あら大変! うちの水がなくなっちゃう」「うちの水道代が3万円もかかってお金がなくなっちゃう」と、切実に言うと伝わるんです。ぜひ、言い方も工夫してみてください。

 5歳のときに聞いた母の話のおかげで靴をそろえるように

5歳のときに母から聞いた話ですが、関東大震災で被災したとき、とっさに靴を履けた人は安全に逃げられたけれど、裸足で外に出た人は走り続けられなかったんですって。
「靴をそろえなさい」と言われたことは一度もないけれど、その話を聞いてからは、いつも靴をそろえるようになりました。今でも、ついそろえてしまうんですよ。

昔話もそうですね。教訓がたくさんありますが、ちょっと怖かったり、つじつまが合わなかったりしても面白いから、子どもの記憶に残る。ママだってお話を作ってもいいですよ。

入園前の時期に戻ったみたいなおこもりタイム。社会とのコミュニケーション不足になるところを、なんとか工夫していきたいですね。
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次回は、「見えないウイルス」を見える化する方法や、「家族ルール」について、柴田先生に聞いていきます。お楽しみに!
撮影/繁延あづさ

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柴田愛子
しばたあいこ/1948年東京都生まれ。保育者。1982年、横浜市で認可外保育施設「りんごの木」を創設。2歳から5歳までの子どもたちが通う。保育の現場に立ちながら、雑誌、新聞、テレビ、ラジオなどで「子どもに寄り添う」姿勢を伝える。著書に『子育てを楽しむ本』『保育の瞬間』『こどものみかた』他多数。絵本に『けんかのきもち』(日本絵本賞受賞)、『ぜっこう』『ありがとうのきもち』『わたしのくつ』『ざりがにつり』他。
りんごの木 http://www.lares.dti.ne.jp/~ringo/

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