2023年3月13日

『ニットやさんのムームー』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより 第356回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子の読み聞かせにこんな絵本はいかがですか。

『ニットやさんのムームー』
タカハシカオリ/作 こぐま社 1540

日ごとに暖かくなって、冬の間ずっとお世話になったニットも、そろそろ洗ってしまう時期?
……なんて思っていると急に寒さがぶり返したり、春の初めは三寒四温。
「おつかれさま」にしたいような、それでいて別れがたいような、ニットが気になるこの時季に、この冬発売になった絵本『ニットやさんのムームー』をご紹介します。

ムームーさんは、旅するニットやさん。
春夏秋冬、旅をしながら、みんなにぴったりのニットをつくってくれます。
編み棒にくるんと毛糸を巻きつけて、わっかの中からちょいと引っ張り出して、くるんちょい、くるんちょい。
くるんちょい、くるんちょい。
これをずっと続けると、一本の毛糸が、セーターや手袋やマフラーになるのです。

木々が色づく秋に、山あいの小さな町を訪れたムームーさん。
公園に座って編みものをするムームーさんを、最初は遠巻きに見ていた町のみんなですが、最初に声をかけたのは、うさぎのミーさん。
毛糸の帽子の素敵な模様が、長い耳でへんてこにのびてしまうことを伝えます。
すると、ムームーさんは
「うんうん なるほど
 それなら こんなのどうだろう」
と、帽子の上のほうをしゅるしゅるしゅるりと少しほどいて、編み棒でくるんちょい、くるんちょい。
すると、ミーさんの耳にぴったりの形の、かわいい模様もちゃあんと見える帽子になりました。
もちろん、ミーさんは大喜び。
他にもいろんな人が順番に、困りごとをムームーさんに相談すると、ムームーさんはそのたびにくるんちょい、くるんちょい。
編み棒と毛糸で、見事に解決していきます。

ひと目ずつの積み重ねがいつしか素敵な形を作るように、困っているときも、目の前のことを、ひとつひとつ片づけていけば、きっと大丈夫。
なんだかそんな風に心強くなる、温かい気持ちになるお話です。
「しゅるしゅるしゅるり」「くるんちょい、くるんちょい」がおまじないのように心に響いて、そしてきっと、編みものがしたくなりますよ!

  

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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