2022年7月16日

『およいでいえにかえりたい』【今日の絵本だより 第301回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『およいでいえにかえりたい』【今日の絵本だより 第301回】の画像1『およいでいえにかえりたい』 
おかもとかなこ/作・絵 PHP研究所 1430

青い空に入道雲。
「あっつーい!
明日から夏休み。
小学生のなぎちゃんは、背中には重いランドセル、おなかの前にはあさがおの鉢植えを抱えて、汗だくの帰り道。
暑くて重くて、あさがおを持つ手が汗ですべりそう。
「もう だめだ」
と、道路の掲示板のそばに座り込んで、ひと休みすることにします。
「ああ、あさがおさん。
 わたしは もう、およいで いえに かえりたい……
と思わずつぶやいたら、わあ、びっくり!
鉢植えのあさがおがひゅーっと上に伸びて、花からシャワーがふりそそぎ、掲示板はまるで水槽のように水でいっぱいになりました。

泳ぎが得意ななぎちゃんは、掲示板に登って、水の中に飛び込んでみます。
ばっしゃーん。
ぶくぶくぶく。
「わぁ、きもちいい~」
白い泡の向こうでは、他にもたくさんの子が泳いでいるみたい。
水の上に顔を出すと、頭上に延びる高速道路が、今は流れるプールとすべりだいに変わっています。
なぎちゃんは早速そっちに向かいます、得意の背泳ぎで!

暑い日に飛び込むプールの気持ちよさが、体でまるごと感じられる一冊。
なぎちゃんの解放感が読者にもダイレクトにうつるようで、ワクワクします。
作者のおかもとかなこさんは、幼い頃から泳ぐのが大好きで、風景が「水」に見えてしまう癖があるのだそう。
水泳だけでなくアーティスティックスイミングも長年続けていたそうで、なるほど、だからこんなにも、水の中に身をひたす気持ちよさが絵本じゅうにあふれているのですね。
現実からちょっと不思議な世界への飛び込み方、そして戻り方もお見事です。

絵本はいつ出会ってもよいものですが、お話の内容にぴったりのタイミングで出会うと、ぐんと深く心に残るもの。
夏休み直前の、たくさんの荷物の持ち帰りの時期(まさに今ですね!)に、ぜひどうぞ。
入学前のお子さんでも、「ママも昔、こうやって持って帰ったよ~」と、思い出話をするのも楽しいですよ。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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