2022年3月4日

『きかせて あなたのきもち 子どもの権利ってしってる?』【今日の絵本だより 第277回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『きかせて あなたのきもち 子どもの権利ってしってる?』【今日の絵本だより 第277回】の画像1『きかせて あなたのきもち 子どもの権利ってしってる?
長瀬正子/文 momo/絵  ひだまり舎  1980

長く続くコロナ禍の中、先週はロシアによるウクライナへの軍事侵攻という、辛いできごとが起こりました。
2年にわたる気持ちの晴れないマスク生活、さらに今回の衝撃的なニュースに、大人も胸がふさがれますが、子どもたちの心はどうでしょう。
普段通りの姿に見えても、胸の内にはいろいろな思いがたまっているかもしれません。
今回ご紹介する『きかせて あなたのきもち』の帯には、
「がまんで心がつかれたら この絵本をひらいてみよう」
と書かれています。

本を開くと、質問が10問。
最初の質問は、
「何をしてるときが
 さいこうの気分?
 ゆっくりしたいときって
 どんなとき?
隣のページには、「あなたが持っている子どもの権利」として
「あなたはいつでも、つかれたら
 ゆっくり休むことができる。
 遊びたくなったら、思いきり
 遊ぶ時間を持っていいんだ。」
と解説があります。
これは、国連で採択され日本も批准している「子どもの権利条約」の「第31条 休み、遊ぶ権利」です。

「本当は
 だれかに
 言いたいことは
 ある?
という質問の解説には、
「あなたはいつだって、
 自分の気持ちや考えを
 言っていい。
 うまく言えなかったら、
 文字や絵でかいてもいいよ。」
これは「子どもの権利条約」の「第12条 意見を表す権利」にあたります。

質問に答えながら自分の気持ちを表すことで、「気持ち」が子どもの持つ「権利」とつながっていることに気づく絵本。
ふろくのワークブックには、実際に質問への答えを絵で描いたり言葉で書くこともできます。
kodomoe読者には「うちの子にはまだ難しいかな?」と思われる方も多いかもしれません。
でも、コロナ禍や災害などの非常時、大人が大変なときには後回しにされがちなのが、子どもの気持ち。
そこに一度寄り添うことで、きっと見えてくることがあります。
大人も自分自身で10の質問に答えてみると、ふたをしていた自分の気持ちに気づいて、ハッとするかもしれません。
親子で一緒に読んで、もし今は思うような反応がないとしても、手元に置いて長い子育ての中で折に触れ開きたい、道しるべとなるような一冊です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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