2021年11月3日

『星につたえて』【今日の絵本だより 第249回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『星につたえて』【今日の絵本だより 第249回】の画像1『星につたえて』
安東みきえ/文 吉田尚令/絵 アリス館 1650円

11月3日は、世界クラゲデー。
それにちなんで今回は、クラゲが主人公の絵本、『星につたえて』をご紹介します。

はるかはるか昔のこと。
夜の海にひとり浮かぶクラゲに、声をかけたものがありました。
「やあ、月かとおもいました」
声の主は、空に浮かぶ星でした。
クラゲと星は、すぐに打ち解けておしゃべりを始めます。
何万年もひとりぽっちで旅していた星は、空がどんなに広く果てないかを、クラゲに話しました。
クラゲも、自分の暮らす海がどんなに広くて深いのかを、星に聞かせます。
「たがいが知らない世界の話はふしぎで、
 だからよけいに美しく思え、
 それは胸のときめくものでした。」

楽しくおしゃべりをする内に、夜明けが近くなりました。
「今夜もまた会えますか」
と問うクラゲに、星は言います。
「わたしはほうき星。今夜はここをとおりません。
 何百年かたてば、とおるかもしれません」
胸がいっぱいになったクラゲは、星につたえようとした大事なことを、言葉にできませんでした。
そして、言えなかったその言葉を、子どもクラゲに託しました。
子どもクラゲは、孫クラゲに。
孫クラゲは、ひ孫クラゲに。
そうして、長い長い時が過ぎ……。

クラゲが星につたえたかった言葉は、一体何でしょう。
それは最後にわかります。
誰かを想う気持ち、その永遠の尊さに、こちらも胸がいっぱいに。
丁寧に紡がれた言葉に、潤むような青と光が輝く絵。
絵本ならではの響き合いが美しい、大切な人と一緒に読みたい一冊です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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