2021年10月9日

『あっぱれ! どぐうちゃん』【今日の絵本だより 第243回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『あっぱれ! どぐうちゃん』【今日の絵本だより 第243回】の画像1『あっぱれ! どぐうちゃん』
堀切リエ/文 長谷川知子/絵 ポプラ社 1650円

10月9日は、「ど(10)」「ぐう(9)」の語呂合わせで、「土偶の日」。
この日にぴったりの絵本なんて……、ありました!
今年の6月発売の新刊、『あっぱれ! どぐうちゃん』をご紹介します。

毎日雨が降り続いて、おじいちゃんの畑のジャガイモが病気にならないかと、心配なぼく。
畑にむかって
「どうか、ジャガイモが、
 ぶじ、そだちますように!」
と祈ると、あれ? 
畑の土に、何かのかけらが埋まっているのを見つけました。
すると、
「ドグドグ ドルルルン!」
土の中から、あっちからもこっちからも、たくさんのかけらが飛び出して。
集まってくっついたと思ったら、人の形になりました。
ぐるぐる模様の体に、大きな目。
しかも、何やらしゃべります。
「ド・グ……ドグウ」
「きみは、どぐう、ちゃん?」
「ドグ!」

そしてどぐうちゃんは、あっという間にぼくを連れて、地面の中へ。
暗い穴をどこまでも抜けて、着いたところは、縄文時代の世界!
どぐうちゃんのお家に招かれて、お母さんが出してくれたゆで栗は、甘くてほくほくです。
それからふたりに連れられるまま、森へ向かうと……。

いくつもの場面で繰り返し現れる渦巻き模様に、赤く燃える炎。
土偶たちの力強い踊りに、命を照らす月の光。
太古の空気、縄文時代のエネルギーが、ページに満ちあふれています。
社会の教科書で見た遮光器土偶が、しゃべって、笑って、いきいき踊る。
いえ、この絵本を一度読んだら、「遮光器土偶」なんて他人行儀な名称でなく、もう「どぐうちゃん」としか呼べなくなってしまいます。
1万3000年から2300年前まで、1万年以上続いたと言われる縄文時代。
どぐうちゃんの笑顔に心をつかまれて、遠い存在だった歴史の一時代が、ぐっと身近になる一冊です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

 

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