『とうもろこしぬぐぞう』【今日の絵本だより 第233回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『とうもろこしぬぐぞう』
はらしままみ/作・絵 ポプラ社 1320円
8月も、そろそろ終盤。
皆さん、この夏、とうもろこしは食べましたか?
おかずにもおやつにもなる、夏の食卓の強い味方、とうもろこし。
そんなとうもろこしが主役の絵本、『とうもろこしぬぐぞう』をご紹介します。
表紙からすでにバシッとりりしく、あぐら姿もいなせな、ぬぐぞうさん。
扉をめくればすっくと立ち上がり、葉っぱの皮の肩口に手をかけて、
「おれは とうもろこし ぬぐぞうだ
いくぞ!」
そういうが早いが、両手で勢いよく、葉っぱを右へばりばり、左へべりべり。
頭の上から両手でつかんで、ぺりぺり、べろーん。
つやつやの黄色い粒が並んだ、体が見えてきました。
たくましい腕を上に伸ばして、
「これも ついでに……」
と、ひげ(ぬぐぞうさんの、髪ですね!)をつかんで、迷いなく、ぶちっ!
「やったー ぬげたー」
と大喜び。
と思いきや、あれ、まだ葉っぱが下の方に残ってる?
ぬぐぞうさん、鼻息も荒く
「えい えい えい」
と、両手で引っ張って頑張ります。
ただひたすらにとうもろこしが、自分の葉っぱを脱いでいく絵本。
でも、何度も読みたくなる面白さ。
絵本の背が下に横向きになるように置いて、上から下にページをめくるというつくりは、なるほど、とうもろこしの葉っぱをむいていく動きと合っているのですね。
確かに、本のページも、とうもろこしの葉っぱも、無条件にもっともっととめくりたくなる、やみつき感が似ているかも!
それにしても、なんでこんなにぬぐぞうさんは読む側をひきつけるのかと思ったら、こちらにこの本の制作秘話がありました。
作者のはらしまさんが、保育園で子どもたちがとうもろこしの皮むきを勢いよく楽しんでいる姿を見て、「こんなに楽しい時間が過ごせる食べ物なんだ」と思ったことから生まれたお話なのだとか。
なるほど、お話の一番最初のもともとに、子どもたちの笑顔や笑い声、勢いがつまっているのですね。
今年の新刊ですが、夏の定番になりそうな一冊、『とうもろこしぬぐぞう』。
読んだら絶対、緑の皮付きとうもろこしを買ってきて
「いくぞ!」
と、ばりばり、べりべり、真似したくなりますよ。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。