『りんごとけんだま』【今日の絵本だより 第210回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『りんごとけんだま』
鈴木康広/作 ブロンズ新社 1540円
5月14日は、けん玉の日。
現在のけん玉の原型、「日月ボール」が実用新案登録された1919年5月14日にちなんで、記念日として登録されました。
誰でも一度は遊んだことのある、そして今やスポーツとしても世界中に広まっているけん玉には、実に100年の歴史があるのですね。
そんなけん玉にちなんだ絵本といえば、こちら。
『りんごとけんだま』をご紹介します。
「りんごとけんだまは なかがいい。
どうしてかっていうとね、
それには ちゃんと わけがある。」
最初から突然の、わくわくの始まり。
さあ、どんなわけだと思いますか?
「かじった りんごと
けんだまのおさらは おんなじ かたち。」
なるほど、けん玉を90度横に寝かせたら……、確かに、食べられた後のりんごの形!
「でも それだけじゃないんだ。」
りんごから発見された万有引力の法則と、けん玉の関係。
けん玉の技「月面着陸」と、月のクレーター=けん玉説。
お話は思わぬ方向に、そしてどんどん壮大に、広がっていきます。
作者の鈴木康広さんは、気鋭の現代アーティスト。
代表作「りんごのけん玉」から、この絵本が生まれました。
誰もが知っている素朴なおもちゃ、自分の手の中のけん玉から、果てしなく繰り広げられる空想。
「この けんだまが
つれていってくれるさきは どこだろう?」
もしかしたら大人よりも子どもの方が、この絵本の世界にすっとなじんで、
「おもしろーい!」
と、行き先知らずの心の旅を楽しめるかもしれません。
ラストの3ページには、りんごと象の鼻。
不思議な余韻が忘れられない方は、鈴木康広さんの作品「未知への鼻」を検索してみてください。
心をのびやかにしてくれる、アートの世界が待っています。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。