
『[新版]トーベ・ヤンソンのムーミン絵本 さびしがりやのクニット』【今日の絵本だより 第147回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
 『[新版]トーベ・ヤンソンのムーミン絵本 さびしがりやのクニット』
『[新版]トーベ・ヤンソンのムーミン絵本 さびしがりやのクニット』
 トーベ・ヤンソン/作 渡部翠/訳 講談社 本体2000円+税
8月9日は、ムーミンの日。
 なぜムーミンの日なのかと言うと、この日はムーミンの作者、トーベ・ヤンソンの誕生日なのですね。
 画家としても高名なヤンソンが描いたオリジナル絵本は、生涯で3冊。(と、写真絵本が1冊。)
 その3冊の中から、今回は『さびしがりやのクニット』をご紹介します。
小さなはい虫の男の子、クニットは、とてもさびしがりや。
 夕方になると、ひとりで住んでいる家中の明かりを灯して、ベッドにもぐりこみ
 「どうして そんなに よわむしなんだよ!」
 と、一晩中、自分で自分に文句を言います。
 夜の怖さに耐えられず、ある朝、家を飛び出したクニット。
 ひとりで歩き続け、たどり着いた浜辺で見つけたのは、小さな手紙の入った小びん。
 お友だちもいなくて、ひとりぼっちがたまらなくさびしい、とつづられた手紙の差出人は、クニットと同じく小さなはい虫の女の子、スクルットでした。
 その手紙をポケットにしまったクニットは、不思議な胸の高まりとともに、カバンを船にして海にこぎ出します。
この絵本は全編、鮮やかな色彩が印象的な特色多色印刷。
 カバーをはずした表紙には、原語でタイトルと作者名があり、原書の雰囲気がそのまま味わえます。
 漢字にはすべてふりがなつきですが、少し長めの文章なので、物語に興味が出てきたお子さんに毎晩少しずつ読み進めてあげるのもおすすめです。
 「長い 旅には カバンより 歌のほうが うれしいものだよ」
 なんて、ムーミンの世界らしい言葉も散りばめられています。
ところで、『さびしがりやのクニット』には、ちびのミイやスナフキン、ヘムレンさんなどムーミン谷の住人は登場しますが、ムーミン自身は出てきません。
 やっぱりムーミンに会いたいな、という方は、特色多色印刷に穴あきのしかけが楽しい『それからどうなるの?』、他の2冊とはまた違った味わいの水彩画による『ムーミン谷へのふしぎな旅』(ともに講談社)も、あわせてお楽しみください。
 3冊とも昨年刊行の新装改訂版、大人のファンにもうれしいグラフィックの美しさです。
選書・文 原陽子さん
 はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。









































