子どもとのおこもりの不安を柴田愛子先生に聞きました〜家族編〜
横浜にある認可外保育施設「りんごの木」で、毎日子どもたちと触れ合ってきた保育士の柴田愛子先生。子どもたちにも大人気ですが、朗らかで力強いコメントに、ママたちからも厚い信頼が寄せられています。
前回に続いて、家族だけで過ごしているママの不安について、柴田先生にお話を聞きました。読むだけでほっとする、おこもり中のママに贈る不安への処方箋。
「見えないけどいるらしい」ウイルスの伝え方
――今、一番大切にしたい「健康」を守るために、母親として工夫してはいるのですが、子どもやパパも含めて家族みんなで守らないと意味がないので、ついつい注意することが多くなっています。そんな声かけも、疲れてきました。
ママは、言葉で子どもやパパをコントロールしようとします。でも、「手洗い!」って、いつも言われていると、「うるさいなー」と聞き流す能力が身につくんですね。自分が子どもだったとしたら、そう思ってしまいますよね?
そんなときは、見える形にするといいと思います。洗面所には、手洗いやうがいの表を作って、洗うたびに〇をつけてあげたらいいですね。「これも、これもできたね。大成功!」と。命令するだけではだめなんです。やる気にするには褒めてあげないとね。
「健康」も「コロナ」も、目に見えないですよね。わかりやすくするために、怖がらない程度にバイキンを描いて、「見えないけどいるらしいのよ」って、じっくり話してみてもいいですね。
「りんごの木」では、「コロナが愛子さんにいくでしょ。お年寄りは、このバイキンに勝てないから、うつさないようにしなくてはいけないのよ。そのためには手洗いやうがいをするだけでいいよ」って、保育士のひとりが子どもたちに教えました。「年寄りだから死んじゃうの?」って思われちゃいましたが、みんなで私を守るために手洗い・うがいをしてくれるようになりました。大切なことなので、一度、きちんと話してみるといいですよ。
家族は社会の原点だから、ひとりひとりが違っていて当然
パパにもきちんと話すことは大切です。子どもにきちんと話をしておけば、子どもも「パパ、手を洗って! マスクして!」となりますから、伝えやすいかもしれませんね。
とにかく、誰でも言われ続けるのは嫌なので、そこは忘れないでおきましょう。家族であっても、ママとパパでは育った家庭環境が違いますから、価値観が違うのはしょうがないですよね。むやみに自分の思い通りにさせようと思わない。
社会の原点が家です。人は、みんな違っていいですよね。子どもだって、パパだって、ママだって、ひとりひとり違っててよくて、そんな中で共同生活をしている。それが家族ですから。
子どもたちは大丈夫。だからママも大丈夫。
――長くなったおこもり生活を送る子どもたちに、先生が伝えたいことはなんでしょうか。
今は外で遊べなくてがっかりですが、どんなところでも遊びを見つけられるのが子どもです。お風呂場やベランダでもいいし、料理を手伝ってもいいし、お布団をサンドバッグにしてもいいし、「ママは小さい頃何やってたの?」ってママの子どもの頃の遊びを教えてもらえばいい。パパもママも、子どものベテランだからね。
5歳の子どもがね、「みんなと遊べなくてつまんないけど、お母さんが遊んでくれる。コロナは嫌なこともあるけれど、いいことも持ってきた」と話してくれました。うちの中にいるのが前より楽しくなったんですって。子どもは順応性があります。子どもとも、パパとも、話したり、怒ったり、許しあったり、信じあったり。相手を信用したコミュニケーションが取れれば、それは窮屈な家だとしても、窮屈ではありません。
親も子も、頭と心は、コロナが運んでくる不安に負けやすいです。
ママはついつい心配で子どもに言い聞かせてしまいますが、子どもの不安や心配にも耳を傾け共感してあげて下さい。
気持ちを受け止めてもらえると、子どもの心はちゃんと動き出します。ママも同じですよね。不安を誰かに受け止めてもらえるとホッとするものです。
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撮影/繁延あづさ
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柴田愛子
しばたあいこ/1948年東京都生まれ。保育者。1982年、横浜市で認可外保育施設「りんごの木」を創設。2歳から5歳までの子どもたちが通う。保育の現場に立ちながら、雑誌、新聞、テレビ、ラジオなどで「子どもに寄り添う」姿勢を伝える。著書に『子育てを楽しむ本』『保育の瞬間』『こどものみかた』他多数。絵本に『けんかのきもち』(日本絵本賞受賞)、『ぜっこう』『ありがとうのきもち』『わたしのくつ』『ざりがにつり』他。
りんごの木 http://www.lares.dti.ne.jp/~ringo/