『とりづくし』【今日の絵本だより 第128回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『とりづくし』
内田麟太郎/作 石井聖岳/絵 すずき出版 本体1300円+税
5月10日〜16日の愛鳥週間も、もう後半。
前回に続けて鳥にちなんだ絵本、今回は『とりづくし』をご紹介します。
タイトル通り、言葉も絵も鳥でいっぱいの一冊です。
一番最初は、
「ことり ひとり ひとりぼっち」
と、ひとり野原で、りんごにもたれて座る鳥。
続けて、
「ことり ふたり なかよく あやとり」
の絵は、「必勝」「合格」のはちまきをしめて図書館で勉強中、……のはずが、あやとりに励んでいるなかよしコンビ。
次は、
「ことり ちりとり きれいずき」
と、今度は別の鳥コンビが、ほうきとちりとりでせっせとお部屋をお掃除。
(かわいい!)
「とり」にちなんだ言葉遊びが、いろんな鳥による楽しいシーンにふくらんで、どんどん続きます。
「絵本」というと起承転結のあるお話をイメージする方が多いと思いますが、言葉遊び絵本って、まだ物語を追うのは難しいお子さんでも、親子で合言葉みたいに共有できて楽しいんですよね。
「いのちとりー!」とか、「とりかえっこ」とか、ユニークな絵とともにお子さんがいつの間にか覚えて、つぶやく予感がしますよ。
いろんな姿形の鳥が登場しますが、「この青とオレンジの鳥、なんて名前かな?」と調べてみたり、大人も鳥に親しむきっかけになるかもしれません。
ところで、出版社サイトの紹介文にはこうあります。
「絵本をよく読んでいると、石井聖岳先生が仕掛けた『遊び』がありますよ。気がつきましたか?」
……わあ!
最初の場面のりんごや、雪原になぜか出てくるしいたけは、そういうことだったのね!!
裏表紙にある一言にはっとして、もう一度最初から読み直して、なるほど、これがこれで……と、再びもりあがります。
秘密の楽しみ、ぜひ見つけてくださいね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。