お母さんに寄りそい、背中を押してくれる。ははおや力を育む絵本【子どもを伸ばす絵本育・10】
もうすぐ母の日ですね。
子育ての毎日は、晴れの日もあれば雨の日も。お母さんに寄りそい、背中を押してくれる絵本、集めました。
【ひとことコメント】は、JPIC読書アドバイザーのコメントです。読み聞かせ経験豊富な専門家の現場の声を、選書の参考にしてみてくださいね。
お母さんこそ、絵本から「生きる力」をもらおう
赤ちゃんのまぶしい力
『あかちゃんが わらうから』
おーなり由子/作
ブロンズ新社
本体1400円+税
不安や心配を吹き飛ばしてくれるのは、赤ちゃんの笑い声。小さな手からあふれる強さ。ぎゅっと抱きしめれば胸に光が満ちてくる。
どうして泣いているのかな?
『ようちえんいやや』
長谷川義史/作・絵
童心社 本体1300円+税
登園前、あの子もこの子も泣いている。あいさつが、椅子のマークが、みんなで歌うのが「いややー」。そんな涙の奥の、一番の理由は?
昔は全然ダメでした、でも!
『おかあさん、すごい!』
スギヤマカナヨ/作
赤ちゃんとママ社
本体1200円+税
お料理ができて、いろんなことを知っていて、勇気があって、力持ち。お母さんがそんなにすごくなった秘密、それはね……。
おかあちゃんはやっぱり最強!
『おかあちゃんが つくったる』
長谷川義史/作
講談社 本体1500円+税
おかあちゃんがミシンでなんでも作れるって言うなら、死んだおとうちゃんを作ってぇな。胸を突く息子の言葉に示した答え、必見。
深く深く、平和を願う
『おかあさんのいのり』
武鹿悦子/作
江頭路子/絵
岩崎書店 本体1400円+税
私の小さい赤ちゃん、一緒に野原へ行こうね、海を見ようね。この手がいつか大きくなっても、どうか銃など握りませんように——。
衝撃の展開にママはどうする?
『おこりんぼママ』
ユッタ・バウアー/作
小森香折/訳
小学館 本体1250円+税
ママにものすごく怒鳴られて、ぼくの体はバラバラに飛んでいっちゃった。頭は宇宙に、おなかは海に。途方に暮れていたら……。
お姉ちゃんだって甘えたい
『だいすき ひゃっかい』
村上しいこ/作
大島妙子/絵
岩崎書店 本体1300円+税
はるなのなぞなぞに降参のお母さんは、罰として「だいすき」100回! ぎゅうっと抱きしめてだいすき、だいすき、だいすき……。
自分のペースでいいんだよ
『はやくはやくって いわないで』
益田ミリ/作
平澤一平/絵
ミシマ社 本体1500円+税
「はやくはやくっていわないで」「いえないきもち いっぱいある」、つぶやきながら海を行く小さな船が、子どもの姿に重なります。
あの特別な日を思い出して
『おかあさんだもの』
サトシン/作
松成真理子/絵
アリス館 本体1300円+税
小さなあなたが頑張って生まれてきた日を忘れない。あの日を思い出せば、どんなことも大丈夫。母親を支える、はじまりの日の記憶。
心をとかす、初めてのだっこ
『まねっこでいいから』
内田麟太郎/文
味戸ケイコ/絵
瑞雲舎 本体1500円+税
自身の虐待の記憶に、娘を抱けない母親。「ママ、まねっこでいいから、だっこして」。初めて重なり合う胸から、命の音が聞こえます。
どんなこと? こんなこと!
『おかあさんに なるってどんなこと』
内田麟太郎/文
中村悦子/絵
PHP研究所 本体1200円+税
仲良しうさぎが考えます、おかあさんになるって、どんなこと? 子どもの名前を呼んで、手をつないで歩いて、心配して、抱きしめて。
JPIC読書アドバイザー
井出ひかるさんに INTERVIEW
読む人と読んでもらう人、双方のコミュニケーション
幼児サークルなどで読み聞かせをしていると、「自分もここで初めて絵本を読んでもらう楽しみを知りました」というお母さんが多く、「絵本は読んでもらうもの」なんだとすごく実感します。自分が楽しかったと思えたら、そこから子どもに読んであげることにつながるかなと、お母さんにもみんなの前で一冊読んでもらうと、最初はもちろん緊張しても、みんなが面白がってくれるとうれしくなったり。そんなふうに人に読んであげる楽しみを知って、おうちでも絵本を読んでもらいたいですね。
お母さんが絵本選びに迷ったら、自分が好きなものを読めばいいと思います。みんながいいという絵本だから、ではなく、お母さんが楽しくないと続かない。自分が小さい頃好きだった本を、お母さんの楽しみのために読んでもいいですし、もし実家にとってあったら、それはとても幸せなことですから、絶対もらってきた方がいいですよ。
子どもに絵本に親しんでもらうなら、絵本専門店で「好きなものを一冊買っていいよ」と選ばせてあげるのがいいですね。図書館でも子どもの名前のカードとバッグを作ってあげて、子どもが借りたいものは自分で借りるようにすることをおすすめします。自分が借りてきた絵本は、やっぱり違います。まだ小さいと絵本を乱暴に扱う心配もありますが、サークルでは貸出時に「汚したり破ったりしたらちゃんと知らせてください」と伝えています。本は紙だから、ハサミがあったら切りたくなる、ペンがあったら書きたくなる。子どもにとってそれは当然だから、絵本の扱い方も大人から伝えてほしい。もしそういうことがあって謝ってくれたときは「ちゃんと直しておくから大丈夫だよ」と話しています。
子どもはひとりひとり気に入る絵本が違って、対象年齢が違うものを好きになったりもしますね。対象年齢表記は、あくまで目安。また、字が読めるようになっても、字ばかりを読んで絵が読めなくなるので、1回目だけでもお母さんが読んであげてください。「絵本はいつまで読んであげたらいいですか」とよく聞かれますが、大人でも読んでもらうと楽しいんだから、「いつまででも読んであげればいいんですよ」と答えます。絵本は、読む人と読んでもらう人がいるコミュニケーション。一緒の場面で笑ったり、ページの中に何かを見つける喜びを共有する、一緒に同じお話を楽しむことが一番。写真やビデオと同じように、楽しい思い出が増える、手に取ればこんなことがあったなと思い出される、その子にとってもお母さんにとっても大切な財産になるものです。
井出ひかるさんのおすすめ 0歳〜
『これはちいさな本』
レイン・スミス/作 青山南/訳
BL出版 本体950円+税
本を知らないロバくんがサルくんに尋ねます、本って何をするもの? 井出さんは小さな子に本の扱い方を伝えたいときに読んでいます。
JPIC読書アドバイザー・保育士
井出ひかるさん
いでひかる/名古屋を中心に読み聞かせ活動を展開、工作や手遊びなども教える。3児の母。
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JPIC読書アドバイザー/井出ひかる、鈴木清美、原陽子 編集協力/原陽子(kodomoe2015年10月号掲載)