『おしょうがつのかみさま』【今日の絵本だより 第97回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おしょうがつのかみさま』
おくはらゆめ/作 大日本図書 本体1300円+税
クリスマスが終わったと思ったら、もうすぐお正月。
クリスマスツリーをかたづけたそばから、大掃除、年賀状、他にもお正月準備のあれこれ……。
家族がいるとにぎやかな反面、大人は息つく暇もないこの年の瀬シーズン。
ミッションの多さについつい険しい顔になりがちですが、そんなときこそ、あえての~んびり、ゆ~ったりと、こんな絵本はいかがでしょうか。
先月出たばかりの新刊、『おしょうがつのかみさま』です。
ねこやうさぎがおうちをきれいに掃除して、門松を立てて、玄関で待っています。
「かみさま まだかな〜」
「はやく こないかな〜」
年が明けたら、へびやかめやつる、仲間たちがたくさんやってきました。
「かみさま、もう きた?」
「まだ みたい」
最後にとらがやってきて
「あけまして おめでとう
みんなで おもちを たべようぜ」
すると、とらの背中に乗っていたかがみもちが、ぱちっと目を開けて
「ちょいと おまち!
わたしが おしょうがつの かみさまなのよ」
えええ? 神様って、おもちだったの?
なんて読者の驚きはさておき、みんなは
「わーい! かみさま いらっしゃい」
「まってたよ」
と大喜び。
みんなでついたおもちを食べて、たこあげ、花札、お菓子にテレビ。
「ふーへーほー
おせちでも たべようっと〜」
「ふーへーほー
すきなだけ ねようっと〜」
みんなそろって、どこまでものんびり、のんびり。
いくつもの
「ふーへーほー」
を声に出して読むたびに、こちらもほどよく力がぬけていきます。
ページを追うごとに眉間のしわがゆるゆるほどけていくような、滋味にあふれた絵と言葉。
おくはらゆめさんの絵本は、いつでも理屈抜きで、のびやかでほっこり。
息を詰めて肩に力が入りがちな子育ての日々に、ひととき、ほうっとよい風を入れてくれます。
そう、みんなで過ごすお正月は、のんびりと、笑顔でいるのが一番ですね。
そうそう、裏表紙には、今年と去年と一昨年の、みんなとかみさまの記念写真が。
最後まで続いているストーリーを、どうぞお見逃しなく。
毎日頑張っている皆様も、たまにはほっと一息ついて。
どうぞよいお年をお迎えください。
……と言いつつ、次回「今日の絵本だより」は新年早々、1月2日(木)12時に公開予定です。
ちょうど今、絵本界で一番話題のあの作品をご紹介します。
お正月休みの合間に、ちょっとのぞいてみてくださいね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。