『おばあちゃんとおんなじ』【今日の絵本だより 第76回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おばあちゃんとおんなじ』
なかざわくみこ/作 偕成社 本体1300円+税
前回は敬老の日にちなんでスーパーおじいちゃんの絵本をご紹介しましたが、今回はまた違う趣の、味わい深いおばあちゃんの絵本をご紹介します。
『おばあちゃんとおんなじ』。
なっちゃんがおじいちゃんとおばあちゃんのおうちに行くと、おじいちゃんはいつでも言います。
「なっちゃんは、おばあちゃんに よく にているなあ」
わたしって、おばあちゃんみたいな顔をしてるのかな?
なっちゃんはちょっと困り顔。
それから、おばあちゃんとご近所まで買い物に出かけたなっちゃん。
おばあちゃんの長いおしゃべりの間、ねこを追いかけてお店の外へ走り出しました。
気がついたら、いつのまにか知らない場所。
そこへ、
「なっちゃんは はしるのが はやいねえ」
と、追いかけてきたおばあちゃん。
「そうだ! せっかく こっちに きたから
ないしょの いいところ、とくべつに
おしえてあげよう」
と言いました。
おばあちゃんについていき、生垣をくぐると、その先に広がっていたのは……。
内緒の素敵な場所で、いつしかおばあちゃんの、子ども時代の思い出話。
みんなで木の実や桑の実を食べたこと。
かけっこも速くて、男の子にも負けなかったこと。
大好物は、お母さんのカレーライス。
「へーえ! おばあちゃん、
こどもだったんだね!」
と、なっちゃんは目を丸くしています。
そう、おばあちゃんも、今のなっちゃんとおんなじ、元気な子どもだったんですよ。
なかざわくみこさんの描く情景は、いつも懐かしく温かく、ページからまるでおばあちゃんのおうちのにおいがしてくるようです。
おばあちゃんと孫娘のご近所でのひととき、それだけなのに、『おばあちゃんとおんなじ』というタイトルが、じんわり心にしみてくる。
なんてことのない日常のひとコマが、おばあちゃんとの時間が、とても愛しく思えてくる、幸せな読後感に包まれる一冊です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。