『はじめてのオーケストラ』【今日の絵本だより 第55回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『はじめてのオーケストラ』
佐渡裕/原作 はたこうしろう/絵 小学館 本体1500円+税
6月6日は、楽器の日。
6歳の6月6日に芸事の手習いを始めると上達する、という言い伝えから、この日に制定されたそうです。
それにちなんで、今回は楽器がたくさん出てくる絵本、『はじめてのオーケストラ』をご紹介します。
主人公は小学一年生の女の子、みーちゃん。
今日は、みーちゃんが初めてオーケストラを聴きに行く日。
オーケストラの指揮者をしているパパが、一年生になったらコンサートに招待すると約束してくれていたのです。
でも、オーケストラってどんなものなのでしょう?
パパが説明してくれます。
たくさんの楽団員たちが自分の楽器を演奏して、みんなでハーモニーを作るのがオーケストラ。
ここの背景で、みーちゃんがいろんな楽器を手にしている場面が素敵なのです。
バイオリン、トランペット、クラリネット、ティンパニ。
みーちゃんののびやかな表情から、音を奏でる喜びがあふれているよう。
ファゴットやコントラバス、お子さんにとっては珍しい楽器も描かれています。
今日パパが指揮するのは、ベートーベンの「第九」。
パパを見送ってから、ママと出かけた夜の街。
コンサートホールの扉が開いて、みーちゃんにとって初めての、特別な夜が始まります。
原作は、世界を舞台に活躍する日本人指揮者、佐渡裕さん。
子どもたちに、ぜひクラシックコンサートを体験してほしい。
演奏者も観客も、ホールにいる全員がひとつになる感動を味わってほしい。
その思いが、この絵本になりました。
絵を手がけたのは、はたこうしろうさん。
「第九」のしらべを、音楽を絵で表すという技に、感嘆します。
第一楽章から第四楽章まで、みーちゃんを主役にして、さまざまに広がるイメージ。
この絵本を開きながら、「第九」の全楽章を聴いてみたくなります。
家路に着く星空の下、みーちゃんが言います。
「ママ、いままでで いちばん
すてきなよるだったね!」
オーケストラが奏でる楽器の音を、自分も聴いてみたい。
読後は純粋にそう思う一冊です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。