はし使い・食事のマナー【今覚えておきたい、子どもができる和のマナー・1】
マナーというとかたくるしいルールのように感じるかもしれませんが、実はよく考えられた簡単で美しいものばかり。五感を育むこの時期に本物を知っておけば、一生の財産になりますよ。クッキングプロデューサーの葛恵子さんにマナーについて教えてもらいました。
感覚を育てている今こそ体験したい“和”
コツをつかめば簡単にできる正しいはし使いや器の持ち方。テーブルに置く器の場所が決まっているとわかれば、配膳のお手伝いだって楽しくなります。「お手伝いを通して自分が家の中で役に立つ存在であることを、子ども自身が知っていることはとても大事」と話すのはクッキングプロデューサーの葛恵子さん。子どもの料理教室を主宰し、だしの取り方からテーブルコーディネイト、食事のマナーまでを長年教えてきました。「子どもはいつだってお母様の役に立ちたいんです。子どもたちと一緒に特別にお母様のためにご馳走を作る回では、親子全員本当に嬉しそうです」
また、味覚、触覚、嗅覚が育つ感覚敏感期に本物を知ることは、子どもの財産になります。「感覚を育み、基本マナーが身についていればいつでもどこでも堂々としていられるし、人を不愉快にさせない思いやりでもあります。マナーは誰からも愛される人になる条件のひとつです」と葛さん。
七五三などで和に触れる機会も多い子ども時代にこそ、親子で本物体験をしていきたいですね。
食事のマナー
毎日触れている和といえば食事ですね。
あたりまえのこともマナーを知ると楽しさに変わります。
おはしの楽な使い方
ごはんをおいしくいただくためにも、簡単におはしが使えたらいいですね。正しい持ち方は、美しく機能的なので、子ども自身が楽になりますし、どこで食べても恥ずかしくないので自信を持って食事ができるようになります。
1. おはしの真ん中より少し上を、鉛筆を持つようにして持つ。鉛筆よりは力を入れないで持つのがポイント。
2. 人差し指と親指の間にもう1本を通し、薬指の爪の横でおはしを支える。
3. 上のおはしを中指で動かせば、はし先がぴったりと合う。下のおはしは動かさないようにすると使いやすい。
いただきますとごちそうさま
ごはんを食べるということは、野菜もお肉もお魚も、すべて命をいただくこと。「いただきます」と「ごちそうさま」は、その命への感謝だけでなく、お米や野菜を育ててくれた人、牛や豚、鶏を育ててくれた人、魚を捕ってくれた人、そして、料理を作ってくれた人への感謝の気持ちを表す魔法の言葉です。
器の置き方、知ってるかな?
和食では、ごはんは左、お味噌汁は右に置きます。これは、日本では位の高い方は左側とされてきたから。そして、お米は八十八日かけて育てられた貴重な主食としても大切にされてきたからです。小鉢は持って食べるので、手に取りやすい左奥に置いて、主菜はおはしをのばしやすい右側で。ぜひ、今日のごはんからおうちでもやってみてください。
ひっくり返しやすいお茶碗や汁椀の持ち方も、美しい持ち方が簡単で安全。まず、子どもは両手で、大人は右手でお茶碗を持ちあげ、左手の親指以外の4本の上に茶碗の糸底(底)をのせ、親指で器の縁を軽くおさえましょう。
一緒に食べる人のことを考えよう
マナーというのは、ルールではなく、一緒にいる人への思いやりです。知らない人とでも、親しい人とでも気持ちよく過ごすためのもの。マナーを知らないからといって非難されることはありません。一緒に食べる人のために、調味料を取ってあげたり、食べるペースを考えたり、そんな気遣いもマナーのひとつです。家族で外食するときも、食事を楽しみつつ、マナーを学ぶ体験ができたら素敵ですね。
教えてくれたのは
葛恵子さん
かつらけいこ/クッキングプロデューサー。本名、岸恵子。2000年より子ども料理教室を主宰。著書に岸朝子と共著『ごはん力』『子どもに恥をかかせない食事のマナー』(マガジンハウス)『子どもクッキング』(講談社)他多数。
次回は、和室の入り方・挨拶の仕方【今覚えておきたい、子どもができる和のマナー・2】です。
イラスト/はっとりさちえ (kodomoe2016年6月号掲載)