『おかあさん、すごい!』【今日の絵本だより 第50回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おかあさん、すごい!』
スギヤマカナヨ/作 赤ちゃんとママ社 本体1200円+税
明日は母の日。
『おかあさん、すごい!』。
ママのみなさん、このタイトルを見て、「そう、すごいでしょ」と胸を張りますか?
「そんな、全然……」と、逆に尻込みしちゃいますか?
「すごいような、すごくないような……」と、思案してしまうでしょうか。
これはどんなママにも、おすすめの絵本です。
おいしそうなホットケーキを、軽々と焼いちゃうおかあさん。
ぼくはうれしくて聞きます。
「おかあさんって どうして おりょうり じょうずなの?」
「それはね、うちのはらぺこちゃんの
おいしいかおが みたいから! …でもね……」
おかあさんも、昔はお料理が苦手だったんですって。
包丁で指を切ったり、砂糖と塩を間違えたり、おにぎりをにぎればへんてこな形に。
ぼくのズボンのアップリケも、今は上手につけてくれるけど、昔は折り紙でさえ下手で、ボタンつけひとつうまくできず。
それでも、今ではミシンも使いこなせるようになりました。
おかあさんになってからの毎日は、それまでの暮らしでは出会わなかったことばかり。
すっかり大人のつもりでも、子育てで初めて経験する驚きは、数限りなく。
24時間、365日、いくつもの失敗。
そしてそのたびに、少しの成長。
毎日の積み重ねの中でいつしか、ものしりになって、強くなって、力持ちになって。
おかあさんも、一日一日、育っていく。
子どもと一緒に、前へ進んでいく。
「おかあさんって、すごい!!」
と手放しでほめてくれるぼくに、おかあさんがかけたラストの言葉。
この一言がなんとも素敵で、日々のふとしたすきまに、繰り返し胸に浮かびます。
「ほんと、その通りなんだよね……」としみじみ。
ぜひご一読ください。
表紙、扉から続く、裏表紙の絵もどうぞお見逃しなく。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。