2019年5月6日

『ばあばは、だいじょうぶ』【今日の絵本だより 第49回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ばあばは、だいじょうぶ』【連載第49回 今日の絵本だより】の画像1『ばあばは、だいじょうぶ』
楠章子/作 いしいつとむ/絵 童心社 本体1300円+税

ついに10連休の最終日。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
今回は5月10日(金)から公開の映画「ばあばは、だいじょうぶ」の原作絵本をご紹介します。

つばさは、ばあばが大好き。
ばあばの部屋に行って、学校でできなかったことを話したり、ママに叱られたときもばあばの部屋で泣いたり。
そのたびに、ばあばはいつでも
「だいじょうぶだよ」
と言ってくれる。
でも、そんな優しいばあばの様子が、ちょっと変わってきました。
犬のコロに、おやつを何度もあげてしまう。
きょうが何曜日か、何度も聞き直す。
得意の編みものが、全然進まない。
ばあばは、「わすれてしまう」病気になったんだって。

ママ手づくりの大きなビンのいちごジャムを、ひとりで全部たべてしまったり。
どんぐりをおかきと思い込んだり、枯れ葉でお茶をいれたり。
ばあばが大好きだったつばさも、ばあばに優しくできないようになり、ばあばの部屋にも入らなくなります。
そんなある日、ばあばが突然、家からいなくなり……。

絵本は「楽しい」「優しい」だけでなく、「悲しい」「辛い」「やるせない」、そうした伝えにくいこともすっと胸に届けてくれる、わかりやすく教えてくれるメディアだと思うのですが、この絵本もまさにそんな一冊です。
ばあばが悪いわけじゃない。
でも、困る。腹が立つ。
今では誰にでも身近な病気となった、認知症。
愛しい家族が変わっていく、その家族に優しくできない自分にも向き合わされる。
それでもすべての光が消えてしまうわけではないことを、ラストシーン、ばあばの言葉が教えてくれます。

映画「ばあばは、だいじょうぶ」は、日本での公開に先立ち、2018 年12月、イタリア・ミラノ国際映画祭で最年少主演男優賞(寺田心)、最優秀監督賞(ジャッキー・ウー)をW受賞。
絵本も映画も、ぜひ家族みんなで読んで、観ていただきたい作品です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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