2018年12月22日

『よるくま クリスマスのまえのよる』【今日の絵本だより 第23回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、
ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめして
いきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『よるくま クリスマスのまえのよる』
酒井駒子/作 白泉社 本体1000円+税

今年ももうすぐ、クリスマス。
今回は、この時季にぴったりの絵本、『よるくま クリスマスのまえのよる』を
ご紹介します。

 お話は、こんな言葉から始まります。
「あしたは たのしい クリスマス。
 いいこには サンタさんが くるよ。
 でもね、わるいこには?」
ベッドで心配そうな「ぼく」の横顔に、ドキリとするママも
いるのではないでしょうか。

 「わるいこには サンタさん やっぱり こないのかしら。
 そう おもうと しんぱいで ねむれない。」
ママにいっぱいしかられた自分はわるいこなんだと、気にするぼく。
そこへ、トントンとドアをノックする音が。
やってきたのはぼくの友達、小さなくまの子の、よるくま。
夜みたいに黒くって、胸にはおつきさまが光っています。

よるくまがサンタさんを知らないことに驚いたぼくは、
サンタさんがわりになって、ツリーの飾りをいくつもよるくまにあげることに。
すると突然、お部屋の電気が消えました。
気づけば、ぼくとよるくまは飛行機に乗り、聖夜の空へ飛び立って……。

絵本好きの人には、酒井駒子さんの描く子どもが大好き、
という方も多いのではないでしょうか。
幼い子ならではの、いとけなさ、柔らかさや温かさ。
そして、時折のぞくせつなさ。

私には、この絵本はすでに懐かしいものになっているのですが、
「じゃあねぇ ぼうや もうそろそろ もどっておいで」
「もう しんぱい なんか しないでね」
というママの言葉が、何かの拍子に、心にふわりと浮かんでくることがあります。
酒井駒子さんの作品は、絵の素晴らしさは言うまでもないのですが、
いつのまにか胸にしみいる言葉の力も、大きいと思うのです。

お話の舞台は、夜。
でも、冷たい暗闇ではなく、ページの中に広がる夜には、
子どもの気持ち、ママの思い、いろんな親子の心を、
ただ静かに包んでくれる温かさがあるようで。
ぼくが空の旅から帰る場面には、ほうっと心が安らぎます。

絵本を閉じても、響く余韻。
子どもも大人も、みんなみんな、どうぞよいクリスマスを。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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