小児科医だから、脳外科手術ができるわけじゃない。それぞれが得意を活かせば、できることはあると思うんです。だいすけお兄さんが、国境なき医師団の加藤寛幸先生と対談。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・17】
万能な人はいない。得意なことで支援していく
だいすけ 僕は先日、テレビ番組のロケで、地震が起きたらどんなことができるのかっていうシミュレーションを体験したんですね。そのときに、思った以上に自分が何もできないままだったことで、すごく自責の念に囚われてしまって。
加藤 そうだったんですか。災害もそれぞれで、たとえば東日本大震災をとってみても、阪神淡路大震災の教訓がそのままは当てはまらなかったんですよね。阪神淡路大震災では、建物の下敷きになる人たちが多く出たので、それ以降は現場で怪我をした人の応急処置がすぐにできる方法を、みんなで一生懸命考えて準備して。そうして東日本大震災のときに、専門の災害派遣医療チームが入ったけど、現地では手当てを施せる怪我人よりも、溺れて助けられなかった人の方がはるかに多かったんです。
最近では、災害直後から心理療法士さんが現地でカウンセリングを行う動きなどもあります。手術はできないけれど、でも被災者の心のケアができる。それと一緒で、なんでも万能の人なんかいなくて。だいすけさんには歌があるように、みんなそれぞれ得意なことを活かして支援していく、それなら多分できるんじゃないでしょうか。
僕は医者ですが小児科医だから、現地で脳外科の手術ができるわけでもありませんし。「あ、これはちょっと手に負えない」ということも多いぐらいなんですよ。
僕が元気でいれば、子どもたちもハッピーになる
だいすけ なるほど。僕は地震のシミュレーションだけでも、「何もできなかった」という思いでいっぱいになってしまったので、先生たちのように被災地や紛争地域などの現場に行く人たちの大変さ、辛さは測りしれないと思うんです。その中でも進み続けるために、気持ちをどう保っていくんでしょうか。
加藤 僕も割とすぐ打ちのめされちゃうタイプなんですけど、努めていることは、自分の得意なこと、いいところに意識を向けることですね。
僕が沈んでいても誰もハッピーにならなくて、僕が元気なら子どもたちもハッピーになるし、職場の人たちもハッピーになる。だからできれば、ひとつでもふたつでも、自分のいいところに意識を向けて、悪いところにはなるべく目を向けないようにしています。
紛争地域など医療体制の整っていないところでは、本当に厳しい環境の中で、大火傷をした7歳の子が、3日間も自力で歩いて病院に来たりするんです。日本だったらありえないことですが、それしか方法がなければ、子どもたちは自分の足で歩いてくる。
僕としては「何とか助けてあげられたら」と思って現地に行くんですけど、彼らのそうした強さだったり、子どもたち同士で助け合っている姿を見ると、逆に「お前もがんばれよ」って言われているような気がします。
子どもがかわいいし愛おしいのは世界中どこでも一緒です。苛酷な状況の中にあるからこそ、子どもたちのより強い輝きを、目の当たりにするのかもしれませんね。
だいすけ ありがとうございます。
僕も、子どもたちに歌を届けることで「未来っていうのはこんなに楽しいんだよ、明るいんだよ」という思い、夢や希望を届けることに喜びを感じています。
先生は先ほど「マイナスからゼロ」とおっしゃっていましたけど、その根本である子どもの命を助けることに、人生をかけてくださっている。それぞれ分野は違っても、ともに子どもの未来を支えるお話ができたのは、何よりうれしかったです。
プロフィール
横山だいすけさん
よこやまだいすけ/NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さんを2017年3月まで最長9年務める。「子どもに良質の音楽を届けたい」という目標のもと、舞台、ラジオ、TVなど幅広く活躍。メ~テレ(名古屋テレビ)「ドデスカ!」(月~金曜6:00~8:00)木曜コメンテーター他、出演多数。YouTubeチャンネル「横山だいすけチャンネル」も配信中。
「だいすけお兄さんとまことお兄さんの世界迷作劇場2023– 2024」が大好評上演中! 第12代体操のお兄さん・福尾誠さんとのW主演舞台が大きな話題に! スケジュールなど詳細はWEBで。
Web:yokoyamadaisuke.com/
Blog:ameblo.jp/daisuke-yokoyama/
Twitter:@daisuke_minna
Instagram:@daisuke_youtube
加藤寛幸さん
かとうひろゆき/ 1965年生まれ。小児科医。人道援助活動家。2003年より国境なき医師団の活動に参加、世界各地に赴く。災害時は国内でも活動。2022年、ウクライナでの活動に従事。著書に『生命の旅、シエラレオネ』(ホーム社 1980円)がある。
インフォメーション
前回のゲスト・フリーアナウンサーの武田真一さんとの対談は、こちらから。
また、kodomoe12月号では、「世界の平和や命を守るために、私たちは何ができますか?」というテーマで、だいすけお兄さんと加藤先生との対談を掲載しています。
これまでの「だいすけお兄さんのパパシュギョー!」一覧を見る。
インタビュー/原 陽子 撮影/大森忠明 スタイリング/吉岡ちさと ヘアメイク/安藤千浪