「せーの!」ひっくり返すときは子どもたちが声かけ。家族で楽しく作る、広島県・お好み焼き【おうちでカンタン!郷土ごはん・11】
子育て中は台所仕事がままならないことって、たくさんありますよね。おいしくて栄養のあるものを食べさせてあげたいけれど、とにかく料理する時間がない! レパートリーもマンネリ! そんなときのお助けメニューにできる“郷土料理”を、さまざまな地域で育ったママたちに教えていただきました。
む、むずかしい!! でも味は最高!
広島県・お好み焼き
ホットプレートで作る料理は、それだけでエンタメ感があって楽しいもの。今回作ったのは、ライターの小田原みみさんに伺った、広島のお好み焼きです。焼きそばとたっぷりの野菜が入ったお好み焼きをはじめて作ったのですが、上手に作るのがこれほど難しいものだったとは! これからもっと焼いてうまくなりたい!と思った、そんなレシピをご紹介します。
今回、郷土ごはんを紹介してくれたのは……
小田原みみさん
おだわらみみ/ライター。小1の娘と年少の息子の子育て中。夫婦ともに広島出身で、現在は東京在住。子どもが成長するにつれて、毎日怒ってばかりだなと痛感する日々。家族全員キャンプと『ゆるキャン△』が大好きで、アニメを見返しては聖地巡りをしている。
関西と広島、お好み焼きの違いとは?!
お好み焼きといえば、関西と広島が有名どころですよね。関西のお好み焼きは、生地に野菜やたまごなどを混ぜ、パンケーキのように焼いたもの。一方、広島のお好み焼きは生地と野菜が分かれていて、焼きそばが入っているのが特徴です。
「広島でお好み焼きと言ったら、いわゆる“広島風”を指すので、広島では広島風とは言わないんです。広島焼きとか広島風お好み焼きと言われることもありますが、広島県民としてはあんまりいい印象を持っていないのが正直なところなんですよ。広島県民はお好み焼きに誇りを持っているので、お好み焼きといえばあの形です」
熱く語ってくださった小田原さんは、帰省のたび必ずお好み焼きを食べると教えてくれました。なんと広島では、至るところにお好み焼き屋さんがあり、家庭ごとに行きつけのお気に入りの店を持っているというのです。
「街にはたくさんのお好み焼き屋さんがあるんですよ。広島のソウルフードですから、スーパーのお惣菜コーナーにも、お好み焼きは必ず売っています。ショッピングモールのフードコートにも一軒は入っていると思います。味は全部違いますが、それぞれにおいしさがあって、家で作るのもお店で食べるのもスーパーのものも、どれも大好きです」
タンパク質も野菜もたっぷりの優秀さ
広島のお好み焼きは、クレープのように薄く焼いた生地にキャベツやもやしをいっぱい挟んで作ります。上には焼いたたまごものせるので、栄養バランス満点の食べ物なんです。
「広島なら、“今日ごはん作るの面倒くさいな……”と思った日は、スーパーでお好み焼きを買って帰りますね。東京にいるとそれができないのが残念だったりします。あんなにたくさんの野菜を別の料理で子どもに食べさせるとなると大変ですが、お好み焼きならパクパク食べてくれるし、子どもたちも大好きです」
材料のおすすめはコレ!
お好み焼きの味の決め手は、なんと言ってもソース。広島県に本社があるオタフクソースの「お好みソース」は伸びがいいのに濃厚で甘味があり、広島のお好み焼きには欠かせません。
「焼きそばは、広島で作られている“ぶちうまい焼きそば”(中村角株式会社)が好きです。東京では銀座で売っているので、買いに行きます。そばではなく、うどん派の人もいるんですよ。トッピングはいろいろあって、基本は“そば肉玉”ですが、シーフードが入ったものや、もちチーズトッピングなどいろいろあります。個人的には、イカ天トッピングがいちばん好きです」
ひっくり返すときは「せーの!」と声かけを!
お好み焼き作りのメインイベントは、生地の上にたっぷりとのせたキャベツやもやし、豚肉までを一気にひっくり返すこと。どうやってもうまくやれそうにないのですが、小田原さん曰く、「高確率で溢れるから大丈夫!」とのこと。
「おうちで作るときは、山のようになったお好み焼きを親がひっくり返すときに、必ず“せーの!”とか“がんばれー!”と、子どもが声かけをします。キャベツがすごい量なので、ひっくり返すときには溢れてしまいますが、全然大丈夫ですよ」
というわけで、チャレンジしてみましょう。我が家にあるホットプレートはいわゆる4人家族で使えそうなものよりもかなり小さいので、大惨事間違いなし……かも?
うまくひっくり返せるかな?
お好み焼きの作り方
材料(1枚分)
薄力粉……30g
水……35ml
みりん……小さじ1/2
キャベツ……130g
もやし……60g
豚バラ肉……30g
焼きそば麺……1玉
たまご……1個
かつお粉……適量
ねぎ……適量
天かす・青のり・焼きそば用ソース・お好み焼き用ソース……適量
作り方
1.キャベツは千切りにする。豚バラ肉は1/4の長さに切る。ねぎは小口切りにする。
2.薄力粉に水とみりんを入れてよく溶き、生地の3/4をホットプレートに丸く広げる。
3.上からかつお粉をかけ、天かす、キャベツ、もやし、豚バラ肉をのせる。
4.隣で焼きそば用ソースを絡めながら焼きそばを炒める。
5.3に生地の残りをかけたらひっくり返し、焼きそばの上にのせる。
でも、一応それらしきものができあがりました! おそらく生地の範囲の狭さのわりに麺が多かったので、座高の高いお好み焼きになってしまいました。
それでも子どもたちは大喜び。はじめて見る焼きそばのはいったお好み焼きにワーッ!と歓声があがり、あっという間に平らげてしまいました。
ヒトクチメモ
お店で食べたことはあるけれど、はじめて作るものにチャレンジするときのキッチンは、まるで実験室のよう。子どもたちと一緒に「これで合ってるのかな……」と言いながら準備していきました。「ひっくり返せる気がしない……」と言うと、「大丈夫だよー!」と自然に子どもたちが励ましてくれ、そんななかで作るのも楽しいひととき。きっと広島にいる方々は、こんなふうに和やかな家族の時間を過ごしているんですね。今回は小田原さんご推薦のイカ天が見つからず断念したので、次回はお取り寄せしてふたたびチャレンジしてみようと思います。
わくわくしたり楽しいなって思ったり。うまくひっくり返せなくてゲラゲラ笑いながらお好み焼きを囲んだり。そんな食事の時間が作れると、1日の疲れや大変なことも少しだけ楽になる気がします。ホットプレートがないときや小さな子がいて危ない場合は、フライパンで作ってみてくださいね。
吉川愛歩
よしかわあゆみ/食のライター・料理家
13歳と5歳の母。暮らしと食のコンテンツ制作に携わり、執筆と料理の仕事をしている。『メスティンBOOK』(山と渓谷社)や『キャンプでしたい100のこと』(西東社)などのレシピ監修も行っている。
Instagram : @yoshikawaayumi