節分に読みたい絵本『おによりつよい およめさん』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより】
ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめするweb連載「親子の読み聞かせに。今日の絵本だより」。過去にご紹介した絵本の中から、おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。今回は、今読みたい「節分」の絵本をご紹介します。
おによりつよいおよめさん

『おによりつよい およめさん』
 井上よう子/作 吉田尚令/絵 岩崎書店 1430円
もうすぐ、節分。
 福豆や恵方巻のパッケージ、お店や町のあちこちに鬼の絵が表れる時季ですが、なかには「おに、こわい……」と不安がるお子さんもいるのではないでしょうか。
 『おによりつよい およめさん』は、そんな恐怖がちょっとやわらぐ(かもしれない)物語です。
山奥の小屋にひとりで住んでいる大きなおには、とんでもない乱暴者。
 気が向くとあちこちの村に降りては、畑の大根をひっこぬいたり、田んぼをけちらしたり、大暴れ。
 ある晩、ひとり酒を飲みながら退屈していたおには、ひらめきました。
 「そうだ、よめを もらうべ!」
 およめさんをもらって、毎日の飯炊きをさせようという算段です。
 そして、夜明けとともにふもとの村にかけおりて、
 「よめを もらいに きたぞ。
  むらいちばんの おなごを よこせ」
 そうしないと村じゅう叩き壊すと息巻くおにに、青くなって相談する村人たち。
 その中から
 「そんなら、おらが よめに なる」
 と前に出たのは、とらという体の大きな娘でした。
「むらいちばんの おなご」というにはいかつい風貌のとらに、おにが首をひねると、とらはすまして
 「うでっぷしなら むらいちばん」
 とうなずきます。
 山の暮らしにはこれくらい頑丈なおなごでもいいかと、おにはとらを小屋に連れ帰り、早速あれこれ家の用事をいいつけると、とらは
 「ちからしごとなら だれにも
  まけねえけど……。
  めしたきは じぶんで やってくれ」。
 かっと来たおにが、とらにつかみかかると……。
タイトル通り「おによりつよいおよめさん」の強さが炸裂する、痛快なお話。
 でも、笑えてすっきりするだけではありません。
 後からじんわりしみてくる温かさが、いつまでも心に、ほかほかと。
 そして改めて、表紙のおにの表情の意味に気づきます。
 ほほえましいラストも、とても今どき。
 懐かしくて新しい創作民話です。
選書・文
 原陽子さん
 はらようこ/フリー編集者、司書、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。









































