『こうもりぼうやとハロウィン』【今日の絵本だより 第247回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『こうもりぼうやとハロウィン』
ダイアン・メイヤー/文 ギデオン・ケンドール/絵 藤原宏之/訳
新日本出版社 1650円
前回に続けて、ハロウィン絵本の2冊目はこちら。
『こうもりぼうやとハロウィン』も、アメリカが舞台のお話です。
春の日の明け方、こうもりのぼうやとおかあさんが、図書館の屋根裏部屋にあるねぐらへ帰ってきました。
ぼうやが眠りにつこうとすると、床の小さな穴から、笑い声が聞こえてきました。
穴から下の部屋をのぞくと、子どもたちが床に座っています。
椅子に座った女の人が、絵本を手に、子どもたちにお話を始めました。
「あるひの こと きんいろの かみの ちいさな
おんなの こが もりを あるいて いました……」
お話に引き込まれ、すっかり夢中になったぼうや。
それからというもの、ぼうやは朝になると、いつも穴から頭を出してお話を聞くようになりました。
ところがある日、身を乗り出しすぎて、下の部屋に落ちてしまいます。
子どもたちは、突然現れたこうもりに大騒ぎ。
ぼうやもあわてて逃げ出し、屋根裏部屋に戻ります。
とっても怖い思いをしたけれど、それでもやっぱり、もっと近くで絵本を見たいと思うぼうや。
「ダメ!」
と一度は止めるおかあさんですが、思い直したように
「そうね……。でも だいじょうぶな ときが きっと くるわ」
とぼうやに言いました。
「その ときに なるまで じっと まつのよ」
そのときって、一体いつなんでしょう。
春から夏になり、夏から秋がやってきました。
「もう いい?」
「まだよ」
を繰り返し、木の葉が赤や金色に輝くようになったある日、ついにおかあさんが言いました。
「ぼうや、みて ごらん。いまよ」
下の部屋の様子をのぞいたぼうやは、びっくり。
「たのしんで くるのよ!」
アメリカの図書館の読み聞かせの様子や、移り変わる季節の美しい情景。
そして、お話が大好きなこうもりのぼうやの愛らしさ。
待ちに待った「そのとき」の謎解きも合わせて、ハロウィンの読み聞かせにぴったりの一冊です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母