『ひ・み・つ』【今日の絵本だより 第139回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ひ・み・つ』
たばたせいいち/作 童心社 本体1300円+税
一年も半分が過ぎて、もうすぐ七夕。
今年の短冊には、皆さんはどんなお願いを書きますか?
『ひ・み・つ』は、主人公のゆうきが、七夕の日におばあちゃんのお願いを叶えようと頑張るお話です。
ゆうきのおばあちゃん、しんばあちゃんは、今度の七夕の日に80歳になります。
ゆうきが
「プレゼントに
いちばんほしいもの
なんですか。
おしえてね!」
と手紙を出したら、しんばあちゃんからは、こんなお返事が来ました。
「あのね、おばあちゃん もう
いっぱい プレゼント もらったから
なんにも いらない。
いま いちばん ほしいのは
ゆうきの えがおだな。」
夏休みには、きっと遊びにおいで、と続けるおばあちゃん。
でもその後に、本当はほしいものがひとつだけある、と書いてありました。
40年前に亡くなったおじいちゃんと、もう一度会って、一緒にダンスがしたいんですって。
おばあちゃんが自分だけに教えてくれた秘密のお願い、どうしたら叶えられるのか、ゆうきは一生懸命考えます。
作者は、『おしいれのぼうけん』(童心社)や『さっちゃんのまほうのて』(偕成社)などで知られる、田畑精一さん。
中を開くと一見「絵本としては長いかな?」と思っても、するすると読めてしまうお話の運びは、さすがです。
親子で絵本を読む中で、文字が多くてもすっとひきこまれるこうしたお話に出会えると、お子さんも絵本から文字の物語の世界へと、自然に進んでいく予感がします。
七夕の夜に、きっと空を見上げたくなる物語。
『ひ・み・つ』の中面も見られる詳しいご紹介は、こちらをぜひご覧ください。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。