『まねきねこ だいさくせん!』【今日の絵本だより 第77回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『まねきねこ だいさくせん!』
澤野秋文/作 講談社 本体1400円+税
9月29日は、まねきねこの日。
「来る(9)ふ(2)く(9)」の語呂合わせから1995年に制定された記念日で、この日にちなんだイベントも、全国のまねきねこにゆかりの地で開催されています。
そんな日にぴったりの絵本はこちらです、『まねきねこ だいさくせん!』。
ぼろまるは、ぶんたの家のそばや「かどやぶ」のまねきねこ。
「かどやぶ」はそばの味はいいのに、お店がせまい通りの一番奥にあるせいか、お客がなかなか入りません。
「このままだと、みせを しめなきゃ ならないな」
と腕組みで思案顔のお父さんを、
「そんな こと いわずに がんばろうよ、おとうさん!」
と励ますぶんた。
そんなある晩、庭から話し声が聞こえてきました。
ぶんたが障子を開けると、ぼろまると通りのまねきねこ仲間が集まって、作戦会議をしています。
「みんなに れいの まねきだいさくせんを たのみたいのだにゃ」
……って、一体どんな作戦なんでしょう?
その翌朝、人気役者のしばざえもんが、この通りに現れて……。
夜の庭で、まねきねこたちがみんなであれこれ話し合っている、なんともかわいい姿。
作戦決行時の、各自の持ち場での連係プレーもお見事です。
江戸情緒たっぷりの絵の中で展開する、スピード感あふれるストーリーは、まるで現代版時代劇のよう。
すみずみまで書き込まれたみごたえのある絵には、さらに全部の見開きにお楽しみ、カッパとねこの足あとがかくれているんです。
絵本の見返しには、これまたいろんなまねきねこがずらり、ここでも絵探しが楽しめます。
そんなふうにお話を読み終わった後も、繰り返しめくって楽しめる一冊です。
ちなみにまねきねこのあげている手、左手なら「人」を、右手なら「お金」を招くのだとか。
ぼろまるのあげている手は左か右か、それも絵本で確かめてみてくださいね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。