『おろろん おろろん』【今日の絵本だより 第67回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おろろん おろろん』
石黒亜矢子/作 偕成社 本体1300円+税
夏も真っ盛り。
そうなると、妖怪や幽霊ばなしの季節でもありますね。
8月8日は、妖怪の日。
この夏発売したばかりの、怖くてかわいい妖怪絵本、『おろろん おろろん』をご紹介します。
妖怪・醜女(しこめ)の子どもが、おめかし中の醜女に声をかけます。
「ははさま どこいくの」
「こよいは おろろんじゃ」
おろろんは、妖怪たちが真夜中に練り歩く百鬼夜行。
「なかよく るすばん してるんだどう」
と、大人の妖怪たちは楽しげに出かけてしまいましたが、留守番なんてつまらない。
妖怪の子どもたちだけで
「みんなを さそって おろろん しようか」
「やろう やろう」
ともりあがります。
さあ、集まりました。
しっぽがふたつの猫又、河童によく似た水虎、体中目玉だらけの百目に、一本足のから傘小僧。
おなじみの妖怪や珍しい妖怪、だけどみーんな子どもたちの妖怪が、にぎやかに出発します。
「おろろん おろろん
おばけの こうしん
おろろん おろろん
どんどん ゆこう」
意気揚々と大声出したり踊ったり、愉快に行進していましたが、気がつけばいつしかそこは、真っ暗闇の知らない場所。
「ここ どこだろう」
「おかあに あいたい」
「こわい〜」
みんなで震えていたところに、やってきたのは……。
迷子になっての不安顔からの、親に会えてほっとした涙顔。
子どもの愛らしさは、妖怪も人間もまるでおんなじ。
リアルでポップ、怖いのに愛らしい、くせになる不思議なこの魅力。
作者は近年の妖怪絵本のトップランナー、石黒亜矢子さん。
絵本のカバーをはずすと現れる、まったく違うたたずまいの表紙に、和の情緒に満ちた見返し。
気鋭のデザイナー、大島依提亜さんによる造本の粋も見どころです。
ただ今、東京・青山のボリス雑貨店にて『おろろん おろろん』絵本原画展が8月13日(火)まで開催中。
ボリス雑貨店は、画家のヒグチユウコさんのギャラリー。
ヒグチさんと石黒さん、おふたりの類いまれな世界が同時に堪能できる、贅沢な機会です。
アクセスや時間など、詳しくはボリス雑貨店公式サイトをご覧ください。
http://www.higuchiyuko.tokyo/index.html
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。