『こぶたのブルトン ふゆはスキー』【今日の絵本だより 第27回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、
ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめして
いきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『こぶたのブルトン ふゆはスキー』
中川ひろたか/作 市居みか/絵 アリス館 本体1300円+税
1/12は、スキー記念日。
スキーの絵本といえばおすすめなのがこちら、『こぶたのブルトン ふゆはスキー』です。
テレビでスキーを見て、「ふゆは やっぱり、スキーでしょう」と、こたつから立ち上がったブルトン。
スキーの板もウェアも持っていないけれど、「いっしょに いかない?」と、いたちのアンドレを誘いに行きます。
アンドレは「いいねえ」と、スキーウェアでばっちりきめて登場。
スキー客でにぎわう駅で出会ったのは、「スキーのことなら、わしに まかせなさい」というだるまのタカサキさん。
列車の中でタカサキさんが持参したこたつを広げ、ブルトンとアンドレにおしるこをふるまうと、「そのおしるこ、まった!」の声が……。
と、スキー場に着くはるか前から、すでに珍道中。
どんどん意外な方向に進んでいくお話に、大人は驚いてしまうかも?
でも、子どもは大好きですよね、この愉快なノリ。
文章を見ると「長いかな?」と一瞬思うかもしれませんが、全然大丈夫。
テンポよく読者をあきさせないお話は、さすが子どもの心をよく知る中川ひろたかさん。
市居みかさんの明るい絵で、ページの中はのびやかな空気に満ちています。
ようやくスキー場についたブルトンは、なぜか突然、ジャンプ競技に出ることに。
会場からは、「ブ・ル・トン! ブ・ル・トン!」の大コール。
「そんなん むちゃくちゃだよ」とブルトン。
そう、むちゃくちゃのはちゃめちゃで、ひたすら愉快。
最初から最後まで、理屈抜きにおかしいんです。
さあ、ブルトンは無事にジャンプを決められるのでしょうか……。
ちなみにブルトンのお話は、『ふゆはスキー』『はるはおはなみ』『なつはプール』『あきはうんどうかい』と、四季の4冊シリーズで出ています。
ブルトンとアンドレとタカサキさんのトリオが巻き起こす愉快な騒動を、季節ごとに楽しんでくださいね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。