注目の作家・チョーヒカルさん「にぎっちゃだめ!」の制作裏話をお聞きしました【コドモエ絵本作家インタビュー】
kodomoe8月号のふろくえほん、チョーヒカルさんの『にぎっちゃだめ!』をご紹介♪
体や物をリアルにペイントする作品で話題の、チョーヒカルさん。今作では「いろんなものを握っちゃう」世界を、写真ではなく絵で表現。その制作裏話をお聞きしました。
にぎっちゃだめ!
『にぎっちゃだめ!』
チョーヒカル/作

冒頭のケーキを握るシーン。右には家族それぞれの反応が描かれていて、ハラハラ感がさらにUP。
現実ではダメなことも、絵本の中なら体験できる
――衝撃的な一冊ができました。
もともと、絵本ではなく個人の作品制作で、いろんなものを握る絵を描きたいと思っていたんです。食べ物とか内臓とか、握っちゃいけないものを握っちゃう瞬間を。その話を担当さんにしたら、そのコンセプトで絵本を作ろう! となりました。絵に描いた餅、ではあるんだけど、やっぱり描きたいのは自分が欲しているもの、理想の世界なんです。やっちゃいけないことをやってしまうのって、お金とかよりもずっと、人間の根源的な欲求じゃないかと思ってます。
――リアリティある絵はどのようにできあがったのですか?
自分で握っているところをタイマーで撮影したり、友達の手を借りて動画を撮ったり。実際は、握ると少しずついろんなものが飛び出してくるのですが、そのたくさんの動画のコマを、一枚の絵に凝縮した感じです。食べ物がぐちゃっとなる絵を描くのが、思いのほか楽しかったです(笑)。これまではパーフェクトな瞬間を描くことが多くて、つぶれたものを描くことがなかったので、新鮮な面白さがありました。
――制作でこだわった点は?
現実ではダメなシーンではあるんですけど、見ていて嫌な気持ちにならない、楽しんでもらえるような絵を目指しました。きれいに握れるお寿司でバリエーションを出したり、猫のしっぽも結局握れず逃げられちゃったり。あとはワイプを入れてコミカルにしてみました。

本物のショートケーキを自分で握って、資料写真を撮影。もちろん実際は真似しちゃダメです!!!

スポンジの質感や手の筋肉の動きなどを、まるで本当に握っているかのように描写するため、少しずつ塗り重ねていきます。
――ワイプ、絵本では珍しい表現ですよね!
身近な感じが出るといいなと思って、家族をからめました。お父さんは担当さんがモデルです。
――前作『なにになれちゃう?』も、ページをめくるたびに驚きのある、素敵な作品でした。
絵本を作るときは、手法にかかわらず、驚きや不可思議な要素を入れたいなと思っていて。今回も、空を握るという不思議なシーンを盛り込んでみました。ぜひ楽しんでください!
なにになれちゃう?
見ればみるほど新しい発見が!
『なにになれちゃう?』
白泉社 1320円
表紙の写真はちょうちょ? それとも手? よーく見ると、手にちょうちょの絵を描いているんです! 想像力を持って眺めてみたら、自分の身体が今よりもっと好きになれちゃう!?
チョーヒカル
Cho Hikaru 1993年東京生まれ。2016年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。絵本に『じゃない!』(フレーベル館)、『まるごとうちゅうカレー』(PHP研究所)など。
(kodomoe2025年8月号掲載)