「しごとば」シリーズ作者・鈴木のりたけさんの「仕事場」でインタビュー!「しごとばのワクワクの先にある、世の中の楽しさ、未来の面白さを伝えたい」
2025年3月7日

「しごとば」シリーズ作者・鈴木のりたけさんの「仕事場」でインタビュー!「しごとばのワクワクの先にある、世の中の楽しさ、未来の面白さを伝えたい」

ママパパだけでなく、周りの大人がしている仕事について、絵本を通して知ってみるのはいかが? 仕事に関する絵本も多く手掛ける鈴木のりたけさんに、取材のコツやご自身の仕事歴についても伺ってみました。

わかる喜び、知る楽しさを
「しごとば」で伝えたい

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――「しごとば」シリーズの誕生のきっかけを教えてください。

都築響一さんの『TOKYO STYLE』という東京の一人暮らしの部屋ばかりを写した写真集があるんですが、部屋の様子にその住人の人となりがにじみ出ているのが面白くて。こういうことを仕事の現場バージョンで、絵本でやってみたら楽しいんじゃないかなと思ったんです。

本当の仕事場はどれも、絵本のように見開き一画面では収まらないんですね。もっと広くて、この作業は別の場所でやって、とか。でもこの一枚の絵にすべて収まっている快感を伝えたいというか。これを見て好奇心がわき上がってほしい、「なんかすごいわかった気がする」「知るって楽しい」って思ってほしいんですよね。

僕が大好きなかこさとしさんの絵本は、そういう力がすごくあるんです。『地球』とか、地面の下の様子を実際よりも単純に、わかりやすいように編集して描いている。そのセンスのある編集作業を頑張ってやれば、仕事というテーマも面白く子どもたちに伝わるんじゃないかなと思いました。

――取材にはどれぐらい準備を?

それね、しないって決めたんですよね。生半可な知識で臨むよりも、「なんですか、それ? どう使うんですか?」とか、素人が目をキラキラさせて聞く方が相手も話しやすい。「わー」って盛り上がる初めての感動を、ぎゅっと詰めて描きたいと思っているので。

仕事の現場はまさに宝探し、見たことのない道具がざっくざく出てくるんですよ。例えばお豆腐屋さんで、豆乳に、にがりを入れて混ぜる器具があって、名前を聞いたら「ワンツー寄せ器です」って(笑)。「えー?」って言ったらカタログを見せてくれて、正式名称だったんですよ。お坊さんの取材で見た仏具カタログも面白かったですよ。道具の名前がすごく難しい漢字ばかりで、百万円、五十万円、二十五万円と、いろんな値段の弥勒菩薩像(みろくぼさつ)があったりして。

仕事にはその人の
生きざまが表れる

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取材で撮った写真を見ながら原画制作。イーゼルは絵を描きやすいようにカスタマイズ。

――子どもの頃、将来の夢は何でしたか?

僕は結構口が達者だったので、小学校の先生に「弁護士になれば」って勧められたんですよ。「口がうまい人が困っている人を裁判で助ける、正義の味方みたいな職業だよ」って聞いて、いいなあって。でも六法全書を全部覚えなきゃとか聞いて、うわ、なんかちょっと違うかもなって。

大学卒業後はJR東海に就職して、研修では保線の現場から駅の改札業務、新幹線の運転まで、一通り経験しました。それから新規事業開発の部署に配属されましたが、もっと自分の手で作る、手触りのある仕事がしたいなと思って、1年9か月で辞めて。

その後は自分で雑誌を作ろうと、デザインを勉強しながらいろいろ頑張ったり。それから広告制作のグラフィックデザイナーを8年半ぐらいしていました。仕事は面白かったんですけど、もうひとジャンプして、自分宛てに来た依頼に応えるような、自分の名前での仕事がしたい、じゃあ自分で絵を描こう、と思って描き始めて。昼間はデザインの仕事をして、帰宅後に夜中まで絵を描く生活を続けて、絵に専念したくてフリーランスになったのが33歳頃ですね。

――これから新たに挑戦してみたいことはありますか?

「しごとば」の取材をしていると、やっぱり仕事ってその人の生きざまがすごい表れるんですね。そこにさらに興味が出てきたので、新しいシリーズ「しごとへの道」を描き始めたんです。もうちょっと深く、その人のバックグラウンドを知ってみたいと。

どんな仕事でもその背景にはちゃんと人が介在していて、みんな一生懸命時間とエネルギーを費やしている。それが見えてくると、なんか世の中がすごくいいものに見えてくるんですよね。人の仕事場を見てワクワクするのもいいんだけど、その先に何かこう、「世の中ってなんか楽しいね」「未来には面白いことが待ってるね」と思えるような本が作りたいと。

常に自分の心を真ん中に置きながら、いろいろ寄り道して挑戦していく中で、仕事って見つかる、自然とできあがるというか。僕だって寄り道をして、あれもやってこれもやったからこそ、全部つながって今に至る感じですし。仕事の選択は決して急ぐ必要はない、長い目で見ていいと思うんです。

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「しごとば」シリーズ

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プロの仕事を徹底図解
『しごとば』
すべて鈴木のりたけ/作
または作・絵
ブロンズ新社 特記ないものは各1870円

2009年刊行の第1弾では新幹線運転士、すし職人、自動車整備士など9つの仕事場を紹介。シリーズ6作品に加え、2023年からは新しくコミック形式の読み物シリーズ「しごとへの道」が登場。シリーズ第2弾も発売されている。

プロ野球選手、
豆腐職人、花屋など

『続・しごとば』

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教師、消防隊員、
僧侶、女優など

『続々・しごとば』

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スカイツリーができるまで

『しごとば 東京スカイツリー』1980円

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花火師、パン職人、
幼稚園教諭など

『もっと・しごとば』

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プロサッカー選手、
探検家、医師など

『やっぱり・しごとば』

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仕事に出合うまでの
道のりを深掘り

『しごとへの道1
パン職人 新幹線運転士 研究者』1430円

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鈴木のりたけ
すずきのりたけ/1975年静岡県生まれ。「しごとば」シリーズ(ブロンズ新社)、『ぼくのトイレ』(PHP研究所)他、作品多数。『大ピンチずかん』(小学館)では絵本賞8冠達成。

撮影/黒澤義教 編集協力/原陽子(kodomoe2023年10月号掲載)

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