今年も名作ぞろい!「MOE絵本屋さん大賞2019」の第1位は『なまえのないねこ』。かこさとしさんの遺作も
今年で第12回となる「MOE絵本屋さん大賞」の贈賞式が、1月23日に行われました。2018年10月~2019年9月に出版された絵本の中から、全国の書店の児童書売場担当者3000人にアンケートを実施して決まる、新刊絵本のランキング。今年も個性的な本が出そろいました。
■MOE絵本屋さん大賞2019 ベスト10
第1位 『なまえのないねこ』竹下文子/文、町田尚子/絵(小峰書店)
第2位 『ころべばいいのに』ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)
第3位 『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』シゲタサヤカ(白泉社)
第4位 『それしか ないわけ ないでしょう』ヨシタケシンスケ(白泉社)
第5位 『へいわとせんそう』たにかわしゅんたろう/文、Noritake/絵(ブロンズ新社)
第6位 『みずとは なんじゃ?』かこさとし/作、鈴木まもる/絵(小峰書店)
第7位 『Michi』junaida(福音館書店)
第8位 『ねえさんといもうと』シャーロット・ゾロトウ/文 酒井駒子/絵・訳(あすなろ書房)
第9位 『ねこのずかん』大森裕子/作、今泉忠明/監修(白泉社)
第10位 『ノラネコぐんだん おばけのやま』工藤ノリコ(白泉社)
昨年に引き続き、ヨシタケシンスケさんや大森裕子さん、工藤ノリコさんが受賞する中、戦争をテーマにした『へいわとせんそう』や、美しいアートブックのような『Michi』、シャーロット・ゾロトウの名作をリメイクした『ねえさんといもうと』など、バラエティに富んだ作品がベスト10に選ばれました。
今年の第1位は、竹下文子さんが文、町田尚子さんが絵を手がけた『なまえのないねこ』(小峰書店)。読み手を見つめるような猫の表紙が印象的な1冊で、竹下さんが本屋さんで見かけたときは、まるで猫を見つけたときのように「いた!」と思ったそう。主人公ののらねこが本当にほしかった温かい気持ちを、竹下さんの愛情のあふれる言葉と町田さんの存在感ある絵で紡ぎ出しています。
第6位の『みずとは なんじゃ?』は、かこさとしさんの遺作。鈴木まもるさんが絵を描いてほしいと頼まれたのは、かこさとしさんが亡くなる約1か月前だったそう。具合が悪いとしか聞いておらず、「じゃあ今の仕事が終わってから……」と編集者と話した後、思い返して「やっぱり早くかこさんのお話を伺いたいです」と電話を掛け直したそう。そのおかげで、本の構成についてふたりで話し合うことができて、かこさんの最後の作品を世に送り出せたことを、感慨深く語っていました。
「kodomoe」の付録絵本から生まれた、『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』『ねこのずかん』『ノラネコぐんだん おばけのやま』も第3位、第9位、第10位にランクイン。贈賞式では、『ねこのずかん』でたくさんの猫を描いた大森さんが「実は、猫を描くのがずっと苦手だったんです」と意外な苦労話を告白。あるとき、猫の体のパーツを描こうとするのではなく、その外側の輪郭から描くようにしたら、おもしろいように描けるようになった、と話してくれました。「猫はこういうもの、と決めつけすぎていたのかもしれません」と苦笑いしていました。
また、書店員の投票で選ばれた0~6歳向けの絵本ノミネート作品から、中学校入学前のお子さんを持つ親御さんの投票で決められるパパママ賞は、工藤ノリコさんの『ノラネコぐんだん おばけのやま』が第1位を受賞。新人賞は、吉本の芸人ひろたあきらさんの『むれ』が第1位に選ばれました。詳しくは「MOE」2月号、パパママ賞については「kodomoe」2月号(ともに白泉社)に掲載されているので、ぜひ読んでみてくださいね。
取材=日下淳子(編集ライター・元保育士)