唾液で感染リスク低下!?  子どもと「唾液力」をきたえよう
2021年1月29日

唾液で感染リスク低下!?  子どもと「唾液力」をきたえよう

冬本番、風邪やインフルエンザなど、感染症が心配な時期ですが、実は「唾液」には感染症にかかるリスクを減らす力があるんです。子どもの免疫力アップのためにも、唾液についておさらいしましょう!

子どもの唾液、ちゃんと出てる?
唾液が減ると免疫低下のリスク大

唾液はよだれやつばのイメージから「あんまりキレイじゃない」という印象を持ちがちですが、実は唾液には感染症のリスクを減らす作用があることが分かっています。
「唾液には、食べ物の消化を助ける、口内環境を良好に保つ、歯の再石灰化を促すなど、私たちの体にとってとても重要な働きがいろいろあります。中でも体の粘膜を病原体から守る抗菌作用は、感染症のリスクを下げる大事な役割として注目されています」と、唾液研究の第一人者である槻木恵一先生。
「唾液の量が減ったり質が悪くなると、こうした働きが低下します。特に最近は感染症対策でマスクをすることが増え、それによる口呼吸で唾液の量と質が低下している人が多いのです」
これは大人だけでなく、子どもにも当てはまること。口を常にポカンと開けている子は要注意です。子どもが口を開けっぱなしにする要因にはほかにも、慢性的な鼻詰まり、歯並び、口周りの筋肉の発達の関係などがありますが、そうした状態だと口の中が乾いて唾液が減ってしまう可能性があります。ご自身や子どもの「唾液力」が下がっていないか、さっそくチェックしてみましょう。

【うちの子の唾液は大丈夫? 「唾液力」チェックテスト】
当てはまるものに☑をつけましょう。

(A)
▢朝ごはんを食べないことがある
▢ヨーグルトなどの発酵食品をあまり食べない
▢食べるのが早く、きちんと噛んでいないようだ
▢外で遊んだり体を動かすことが好きではない

 (B)
▢口の中に口内炎などの傷ができやすい
▢口を開けていることが多く、口で呼吸をしている
▢歯磨きをしているのに虫歯になりやすい

 (A)(B)合わせて☑が4つ以上ついた場合は、唾液力が低下している可能性があります。

「よだれの多い子は元気」は本当だった!
唾液のすごい抗菌パワー

「よだれが多い子は元気、虫歯にならない」「風邪をひかない」なんて聞いたことがありませんか? 実は唾液の中には重要な抗菌物質が含まれているのです。
「唾液は99%が水分で、残り1%の中に100種類以上の有用な成分が含まれているのですが、その中にある抗菌物質によって免疫力が高められると考えられています。数種類ある抗菌物質の中で特に重要なのがIgA(免疫グロブリンA)という抗体。唾液のほか、涙や鼻水、母乳にも多く存在します。
IgAは口の中に入ってきたウイルスなどの病原体を発見すると、それらにくっついて取り囲みます。IgAに囲まれた病原体は唾液によって洗い流されるので粘膜に付着しません。つまり、IgAは病原体が体内に入る前にブロックしてくれる働きがあるのです」

唾液の量と質を高める!
「唾液力」UPで感染症を予防

こうした素晴らしい抗菌物質がきちんと含まれている唾液は、その力を存分に発揮してくれますが、唾液量が減ったり、それに伴って含有成分も減ってしまうと唾液力は下がってしまいます。唾液は加齢とともに自然に減っていくものですが、前出のチェックテストでチェックが多かった方は、すでに唾液力が低下している可能性があります。
「でも大丈夫! 日々の食事や生活習慣で唾液の量と質を上げることはできます。特にIgAは栄養バランスのいい食事、適度な運動などで分泌量を増やせるのです」
子どもと一緒に唾液力を上げるためにできることを、次から見ていきましょう!

◆ヨーグルトを食べる
唾液の質と量を増やすには乳酸菌の摂取が効果的。毎日100gを目安にヨーグルトを食べ続けることで、IgAの増加が期待できます。中でもR-1乳酸菌は、継続的に摂ることで唾液中のIgA分泌速度、濃度ともに上がることが槻木先生の研究により分かっています。

【グラフ】R-1乳酸菌を使用したヨーグルトの摂取により唾液中IgA濃度・分泌速度が有意に増加(変化率)
出典:Gerodontology.2017;1-7.

◆食材を大きめに切る
子どもが食べやすいように食材を小さくすることも多いかもしれませんが、唾液力を高めるには食材を大きめに。自然と噛む回数が多くなり、唾液の分泌量も増えていきます。虫歯の予防や口臭予防にも効果的!

◆小まめに水分補給
子どもは遊びに夢中になると水分補給を忘れてしまうことも。水分は小まめに摂らせましょう。中でも緑茶に含まれるカテキンはIgAの量を調整する作用があることが分かっています。熱いお湯ではなく、水出しやぬるめのお湯で淹れたお茶がベストです。

◆スキンシップを兼ねて「唾液腺マッサージ」
唾液を分泌する唾液腺は口の周囲に3か所あります。唾液腺を刺激すると唾液の量が増えます。リラックスタイムに、ママパパが子どもの唾液線をやさしくマッサージをしてあげるのもよいでしょう。強く押しすぎないように注意しながら行って。

耳の下に人差し指、中指、薬指の3指を当て、円を描くようにゆっくり回してマッサージ。2分で10回のペースを目安に。

【まとめ】
誰もが持っている唾液に、実はこんなすごいパワーがあったなんて! ほんの少し、子どもの食事や生活習慣に工夫を加えるだけで、その力を余すところなく引き出せます。親子で、家族で、唾液力UPにはげみましょう。

教えてくれたのは
槻木恵一先生
つきのきけいいち/神奈川歯科大学副学長・大学院歯学研究科長・環境病理学教授。博士(歯学)。プレバイオティクスの一種であるフラクトオリゴ糖の継続摂取による唾液中IgAの分泌量増加とともに、そのメカニズムとして腸管内で短鎖脂肪酸が重要な役割を果たすことをあきらかにし、「腸―唾液腺相関」を発見。著書に『ずっと健康でいたいなら 唾液力をきたえなさい!』(扶桑社)がある。

イラスト/macco

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