2025年6月3日

12か国語を自在に操る語学の達人は、子どもの頃から特別な訓練をしていたの? 英語力を育むヒントを教えて!

子どもにやらせたい習いごとで常に上位に入るのが、英語です。
数学者のピーター・フランクルさんのような語学の達人は、子どもの頃から特別な訓練をしていたの? 英語力を育むヒントを教えてもらいました !

英語は後からでもOK!
算数に触れるのは幼児期からが◎

好きが学びの原動力に
継続することも大切です

――世界110か国を回り、12か国語を自在に操るピーターさんですが、最初の外国語であるドイツ語をちゃんと習得したのは、意外なことに中学3年生になってからだそう。

6歳からドイツ語の家庭教師に文法や単語を習っていましたが、ちっとも興味が持てず身に付かないまま。ところが中3の夏休みに、オーストリアから来た家族と別荘で過ごした3週間で、僕のドイツ語は飛躍的に伸びました。自分の拙いドイツ語で交流する中、共産圏ではない国から来た彼らの自由で楽しい人生観に触れたことが、僕のドイツ語熱に火をつけたんです。

その後、30年以上前に日本を訪れて日本が大好きになり、日本語を学ぶようになりました。日本語は文章の中で単語と単語の分かれ目が明確でないため、どこで切ればいいのかわからず、辞書などで調べにくい。僕が学んだ言語の中で、そういう表記をするのは日本語とタイ語のみです。漢字にも苦労しました。それでも勉強を続けられたのは、周りの日本人が親切に教えてくれたり、褒めてくれたりしたからです。好奇心や関心が高まれば、人は自ら学ぶようになるのです。

ですから「1歳でも早く英語を始めなきゃ!」と焦る必要はないと思います。親にできるのは、英語に親しみ、子どもが興味を持てるような環境を作ってあげること。何より語学は、コツコツと学び続けることが大事です。僕は年齢のこともあり、日本語力を上げるというよりは忘れない努力を続けています。原稿は手で書くようにし、漢字を思い出せなかったらすぐに調べる。ネットの記事も、疑問に思った表現はその場で調べるようにしていますよ。

――では、乳幼児期に育みたい力には、どんなものがありますか?

英語の場合、「L」と「R」や「J」と「Z」など、日本語にはない音を聞き分ける力は、小さいうちから付けておいていいと思います。オーディオ機能の付いた英語絵本や、『セサミストリート』のような英語番組を一緒に楽しむだけでも十分です。

優先すべきは、日本語の力を豊かにしてあげることです。日本で育つ多くの子どもにとって、母国語は日本語。自分自身や世界について観察し、探索する媒介となるのも母国語です。母国語を通して自分のルーツをしっかり持つことが、人生を生きる上での自信と誇りにつながります。

さらに日本語の豊かさや素晴らしさを知ることで、他の言語への興味や関心が広がっていく可能性もあると思うのです。

12か国語を自在に操る語学の達人は、子どもの頃から特別な訓練をしていたの? 英語力を育むヒントを教えて!の画像1

ゲームなど遊びを通して
算数の論理的思考を鍛える

また、論理的に考える力を鍛えてくれるのが、算数です。人生を計画的、戦略的に生きていくために、算数の論理的思考法は欠かせません。とは言え、小さいうちから嫌々計算ドリルをやらされて、算数嫌いになってしまってはもったいない。

算数好きにするには、ゲームが一番です。おすすめは、オセロや人生ゲームなどのボードゲーム、トランプなどのカードゲーム、図形パズルなどのパズル遊び。買い物など、生活の中のさまざまな体験からも学べます。幼児期から、楽しく算数の力を伸ばしてあげてください。

物事を順序立てて考える論理的思考法は、実は外国語を学ぶときにも役立ちます。伝えたいことを整理し、知っている単語を並べれば、たとえ語彙が乏しくても相手に伝えることができるのです。

外国語を学ぶ真の目的は、外国の人々と親交を深め、異なる文化や価値観、生き方を理解して尊重し、自分の教養を深めて人生を豊かにすること。それができる人こそ、本当の国際人です。自分の言葉で思いや考えを伝えられる力を、小さいうちから養っておくといいでしょう。

ピーター・フランクルさん
ハンガリー生まれの数学者で大道芸人。世界各国で暮らした後、1988年より日本に定住。算数オリンピック委員会理事。メディア出演や講演、執筆など多彩に活躍している。

12か国語を自在に操る語学の達人は、子どもの頃から特別な訓練をしていたの? 英語力を育むヒントを教えて!の画像2

『子どもの英語教育はあせらなくて大丈夫!
12カ国語を操る世界的数学者が、今伝えたい、子育てで本当に優先すべきこと』 
草思社 1540円

イラスト/うすみ(kodomoe2023年4月号掲載)

シェア
ツイート
ブックマーク
トピックス

ページトップへ