絵本が授業の教材に! 子どものやりたいことから広げていく、竹早小学校のユニークな授業の進め方
2021年5月20日

絵本が授業の教材に! 子どものやりたいことから広げていく、竹早小学校のユニークな授業の進め方

kodomoe webの連載「絵本芸人ひろたあきらのお絵かき生きもの図鑑」に、80枚もの応募をしてくれた、東京学芸大学附属竹早小学校の1年生。担任の曽根朋之先生は、普段から絵本を授業に取り入れているといいます。絵本を楽しみながら、子どもがのびのびと学べる学習カリキュラムとは、どんなものなのでしょうか? 曽根先生に詳しくお伺いしました。

曽根朋之(そね・ともゆき)先生
神奈川県生まれ。横浜国立大学教育人間科学部を卒業後、川崎市の公立小学校に勤務。2018年より現職である東京学芸大学附属竹早小学校に着任。日本国語教育学会、創造国語に所属。読解から読書へとつなげる授業作り、物語の創作文など実践を通して研究をしている。『板書で見る全単元の授業のすべて 国語 小学校3年上・下』(東洋館出版社)、『指導と評価』(図書文化)、『教育科学 国語教育』(明治図書)などに原稿執筆。


――前回、「絵本芸人ひろたあきらのお絵かき生きもの図鑑」で考えたムシたちを、算数や図工の題材に発展させていったお話をお聞きしました。教科書からではなく、子どもたちの絵を出発点として授業にまで広げていることに驚きました。

曽根朋之先生(以下、曽根):東京学芸大学附属竹早小学校の自己実現活動では、教科内容に興味を持たせる授業ではなく、子どもたちが興味を持ったことをもとに、カリキュラムを組んでいます。
 普通は「やらなくてはいけない」教科内容があって、先生はその教科内容に子どもを惹きつけるように授業を工夫するのですが、これはなかなか大変です。そこを、子どもたちが今何をやりたいか、今までどんなことに興味があったのかをまず振り返ったうえで、みんなでやりたいことを選んでいく形にしています。構想するのは大変ですが、子どもが興味のあることなので、軌道にのると楽なんですよ。

――国語の時間には絵本をテキストにしているということですが、どんなふうに授業で扱っているのですか?

曽根:子供の興味に合った絵本を、常に探すようにしています。たとえば、低学年では『ぶたのたね』(佐々木マキ/作 絵本館)を題材にしました。「ぶたのたね」シリーズから3冊読み聞かせしたあと、みんなでオリジナルの絵本『ぶたのたね』を作りました。まずは3冊の共通点や相違点を探すことから始めます。そして、人物設定などの共通するところは変えずに、相違点を子どもの発想でアレンジして話を作ることにしました。物語の構造を理解しながら読むことは、話の先を見越して想像する能力の獲得にもつながります。シリーズを読むことで、作者の他の作品に興味を広げることもでき、読書量全体を増やすことにも繋がっているように思います。

 子どもの発想は本当におもしろくて、ぶたのたねを失くしてしまうシーンからの創作として、たねがコンセントの穴の中に入っちゃって、コンセントから木が生えてきました、なんていうのもありました。低学年は特にこういう発想が得意で、それぞれが絵本を作った後、幼稚園に子どもたちが読み聞かせにも行きました。園児たちの反応は正直なので、子どもながらに自分の作品は微妙だったのかなと感じることもあるようで、その場で「先生ちょっと直していい?」と描き直すこともありました。うまくいかなかったから、もう一度直して、改めて読み聞かせに行きたいという子もいて、そういう気持ちは大切にしたいと思っています。

 他にも、夏休み明けにピックアップしたのが、怖い絵本です。『おいで…』(有田奈央/文、軽部武宏/絵 新日本出版社)は幽霊が出るとうわさの公園のトイレに入る話なんですが、話も絵も怖いんです。これを国語教材として、「この絵本のどこから怖いということを感じるんだろうね?」と問いかけしました。表紙の文字の書き方が怖いからとか、絵のこの部分が怖さを感じさせるとか、子どもたちなりに絵や文章を分析します。「目の向きをこうすると怖く感じるんだね」「黒というのは怖い印象を与えるんだね」と話し合っていきました。

――絵本という物語から授業に入ると、勉強しているという感覚が少なくなって楽しそうですね。

曽根:そうですね。もちろん、「好きなことばかりしていつも遊んでませんか?」と保護者の方が心配されるといけないので、毎週、学習計画のお知らせを出しています。「絵本をつくろう」という活動が、国語の「書く」という勉強に繋がっていること、そこから図工の「切り絵の世界」という単元にも関連付けできたこと、絵本の展示をしたときに、後ろでBGMを流したいという意見が出て、音楽の学習と繋げていったことなどを説明しました。ひとつの活動が、複数の教科に発展していっていることを、お伝えしています。

――すごいですね。こういう教科展開をすると、成績をつけるのは難しいのではないですか?

曽根:実はうちの学校は、先生がA、Bと評価をつけるのではなく、生徒の自己評価制なんです。「あいてにわかりやすく話すことはできていますか」など教科ごとの観点を与えて、それに対して自分で「よくできた」「できた」などの項目に丸をつけていくスタイルです。その評価をするための確かめなどは行います。国立大附属の学校では、ペーパーテストだけではない評価方法が多くなっているかもしれないですね。知識・技能といわれる計算や漢字ができているというところだけじゃなくて、思考・判断・表現をのばしていこうとすると、ペーパーテストでははかれないところがあります。学習の自己調整の重要性が言われているので、今後、こういう自己評価を大切にする学校が増えていくかもしれません。

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