「そんな偉そうなことを、どの口がいうか」って(笑)。ヨシタケシンスケさんも、自分の子には評価してもらえない!? だいすけお兄さんとパパトーク【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(後編)】
だいすけお兄さんが、パパやママの代わりにさまざまなジャンルの専門家からお話を聞く「だいすけお兄さんのパパシュギョー!」が、本誌で好評連載中。第5回のゲストは、だいすけさんが普段から作品を愛読しているという、今大人気の絵本作家・ヨシタケシンスケさん。本誌だけでは伝えきれなかったお話を、webで2回に渡ってご紹介します! おおいに盛り上がった前編に続いて、後編をどうぞ!
表現のハードルを下げられるのが、僕の絵本
ヨシタケ 僕の絵本ってこんな絵なので、お子さんが「これなら自分の方がうまくない?」って、絵を描くことのハードルを下げる効果があるみたいです。お手紙とかに描かれている絵が、みんな上手なんですよ。で、それはすごくうれしいことなんですよね。「こんなんでいいんだったらできるよ」って、表現することのハードルを下げられるのが。
僕もずうっと絵が下手と言われて、「人に見せるのは恥ずかしい」という思いがあったから、よくわかるんです。「描くのは好きだけど見せるのは嫌い」っていう気持ちが。大人は「これ何が描いてあるの?」とか、「もうちょっとこうした方がいいね」とか、余計なことをつい言いたくなるんですよね。でも、「描きたいときに描いて、誰にも見せないで捨ててもいいんだよ」「何も言ってほしくなかったら、言わないでおくよ」っていう選択肢をあげてもいいのかもしれない。逆に、「これ、なんだかわかんないじゃん」みたいにお互い一緒に笑い合えていたら、それも楽しいだろうし。
単純に「絵を描く」とか「それを見て意見を述べ合う」ってことにも、実はいろんな着地点があって、お互いが一番楽しい方法を選べばいいっていうことが、今ならわかるんです。自分がそれを言える立場に今いることが、すごく幸せだなと思いますね。
だいすけ 「選択できる」という気持ちって、大事ですよね。夫婦間でも、親子間でも。「自分で選べるんだよ」って子どもに教えてあげられて、選択肢が増えて、生きやすくなるのは、すごくいいことだと思います。
ヨシタケ そう。そうすると、世界の見え方が変わるはずなんですよ。「やらなきゃいけない、でもできてない」だけじゃなくて、「やらなくてもいい」っていう。まあ、そのリスクやペナルティもひっくるめた上で、でも選んでいい、大人じゃなくて自分が決めていいっていうことは、言っていきたい。大人にも、子どもにも。なんとかおもしろおかしく、説教くさくない方法で、「ま、こんなのもあるんだけどねえ~」って、サラ~ッと提案できたらと思います。
自分がありのままに生きるための「ものは言いよう」
だいすけ ヨシタケさんが好きな言葉ですよね、本のタイトルにもなっている、「ものは言いよう」。
ヨシタケ ああ、そうですね。
だいすけ 本当にその言葉に集約されているというか。どういうふうにして行きたいか、その中に答えは必ずあるはずだから。自分が納得して選択できることが、その人がありのままに生きていける世の中を作っていくんじゃないかなあって思いますね。
ヨシタケ そう、選択肢が増えてしばらく経つと、それが市民権を得ていくというか。やっぱり「ものは言いよう」で、言葉って意外といい加減なもので、それぞれの人が自分のルールで勝手に使っているだけであって。
違うルールで使っている言葉に一喜一憂する必要は、本当はないんですよね。「お前、それ、逃げてるだけじゃないか」って言われても、その「逃げる」って言葉だって、否定的な意味で使う人と肯定的な意味で使う人がいるんだよ、その言葉の使い方は、人に強制できるものでもないんだよ、ってことですよね。自分は自分なりの言葉の使い方、言葉の意味づけを考えていくしかないし。
できるだけ人を傷つけない配慮も必要だけれども、とは言え、その配慮ができる人って意外と少ないんだよねえ、だから傷つくことも多いけど、まあそこはね、ある程度しょうがないんだよねえっていう。
だいすけ しょうがないんだよねえ(笑)。
ヨシタケ そうそう(笑)。その「しょうがないんだよねえ」っていう部分を、どうにかおもしろおかしく、「ゼロにできないんだよねえ」って、伝えられればいいんですけど。