『いっしょにいこう』【今日の絵本だより 第293回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『いっしょにいこう』
ルース・リップハーゲン/作 木坂涼/訳 マイクロマガジン社 1540円
発売中のkodomoe6月号「季節の絵本ノート」では、来るべき梅雨にちなんでカエルの絵本を5冊紹介しています。
ちなみに、1年を72の季節にわけて名前を付けた七十二候では、例年5月5日から5月9日頃が「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」。
今年は5月6日がこの日でした。
暦の上では、すでにカエルのシーズン入りしているのですね。
今回は本誌で紹介した5冊とは別に、つい最近発売になったばかりのカエルの絵本、『いっしょにいこう』をご紹介します。
「あーぁ、つまんないなー。ねえ パパ、
なにかして あそぼうよ」
と、ソファにひっくりかえってパパを見上げるカエルのコーディ。
そこへ、一通のお手紙が。
それは、パパの好きな”ぴょんぴょん・バンド”のコンサートの招待状でした。
でも郵便屋さんが遅かったのか、コンサートの時間はなんと今夜。
「いそげば きっと
まにあうはず」
とパパは早速、コーディの手を引いて出かけます。
でもコーディは道々、まわりを見ては
「ねえ、パパ みて! むしたちが
さかさまに あるいてる」
「わあ! ねえ みて。ワニだよ。
ワニに にた ぼうがある。
ぼく これ もっていこうっと」
と、なかなか前に進みません。
このペースではコンサートに間に合わないと、気が急いて仕方ないパパ。
そのたびにコーディに注意していたら、なんとパパの方が思わぬピンチに見舞われて……!?
「そんなの いいから、さあ、いこう」
「そんなことしてるなら おいてくぞ」
ついつい出てしまうパパのお小言、大人ならみんな共感しますよね。
でも、子どものコーディに勇ましくピンチを救ってもらって、パパの気持ちにも変化が。
帰り道は、行きの道では気づかなかったいろんなものがパパにも見えてきます。
そう、この絵本は、コーディのように足元をゆっくり見始めると、いろんな生きものや素敵なものが次々に見えてくるのが楽しいのです。
まるで子どもの目だけが見つける、特別な宝物のように。
来月の父の日にパパと一緒に読んで、親子で宝探しをするのもおすすめですよ!
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。