『おおさむこさむ』【今日の絵本だより 第267回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おおさむこさむ』
こいでやすこ/作 福音館書店 990円
1月20日は、大寒。
二十四節気の最終節で、一年の中で最も寒い時期であり、暦の上では次の立春から春となります。
そんな寒い季節の締めくくりに、『おおさむこさむ』をご紹介します。
きつねのきっこに、おおばあちゃんが作ってくれた緑のマント。
ふわっと裾が広がって暖かくて、いたちのちいとにいもおそろいです。
きっことちいとにいは、早速その新しいマントをはおって、そり遊びに出かけることに。
おおばあちゃんは
「こんな ゆきのひには きっと ゆきぼうずが でるぞえ」
と言いますが、三人のワクワクはとまりません。
おおばあちゃんは仕方なく、お茶を入れた魔法瓶をきっこに渡して
「ゆきぼうずに あっても けっして さむいと いわないこと」
と言いつけて送り出します。
三人がそりを引いて雪の山を登っていくと、やがておひさまも顔を出してきました。
「おおさむ こさむ ゆきぼうず
でてこい でてこい ゆきぼうず」
元気に歌うと、
「ぼくたちを よんだ?」
という声がしました。
現れたのは、小さな雪だるまの「おおさむ」と「こさむ」。
きっことちいとにいは、ふたりと一緒にそりすべりをして楽しく遊びます。
すっかり暑くなったみんなに、おおさむとこさむはかき氷をどっさり用意してくれるのですが……。
なんだか雲行きが怪しくなってからの、手に汗握る急展開にドキドキ。
雪の冷たさと厳しさ、そして無事戻れたおうちの温かさが、胸にしみるお話です。
ラストシーン近くに、「きつねのきっこのおはなし」シリーズの春の物語『おなべ おなべ にえたかな?』(福音館書店)のおなべが、お部屋の中にさりげなく登場。
ハラハラドキドキに敏感なお子さんには、2冊続けて読んで、冬から春への橋渡しをしてホッとするのもおすすめです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。