『レモンちゃん』【今日の絵本だより 第242回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『レモンちゃん』
さとうめぐみ/作 PHP研究所 1430円
10月5日は、レモンの日。
高村光太郎の詩「レモン哀歌」で詠われた妻・智恵子の命日が10月5日であることにちなんだ記念日です。
そのレモンの日に間違いなくぴったりな一冊、『レモンちゃん』をご紹介します。
レモンの女の子、レモンちゃんが、「おいしいもり」にお友達を探しにきました。
なわとびで遊ぶりんごちゃんやももちゃんを見つけて、早速
「なかまに いーれーて!」
でも、りんごちゃんに言われてしまいます。
「わたしたちは あま〜いのよ!
あなたは なかまじゃないわ!」
仕方なく、ボール遊びをしている野菜たちのところに向かったレモンちゃん。
再び、
「なかまに いーれーて!」
でも
「レモンって やさいか?」
「きいたことないぞ」
とみんなはぶつぶつ。
そして、だいこんくんが
「おまえは きっと あれだ!
はじっこに いる やくみだよ」
さらに
「やくみは やくみの ところへ いきな!」
と言い放ちます。
またとぼとぼと、やくみの仲間を探しに行くレモンちゃん。
歩いて行くと、わさびあにき、しょうがにいさん、とうがらしやろう、ゆずねえ、かぼすねえ。
5人のちょっと変わった(でも優しい)、にいさんねえさんに会いました。
ちょうどその頃、「おいしいもり」のみんなをねらう怪しい影が。
レモンちゃんを加えたやくみの6人は、早速「やくみレンジャー」に大変身!
刺激たっぷり、やくみパワーでみんなを救うべく戦います。
先月この連載で同じ「おいしいもり」シリーズの『ぶどうくん』をご紹介しましたが、そのシリーズ第1弾がこちらの『レモンちゃん』。
こちらのリンクから、『レモンちゃん』公式の読み聞かせ動画が閲覧できます。
果物からも、野菜からも、仲間に入れてもらえないレモンちゃん。
レモンちゃんのアイデンティティって……と、保護者目線ではホロリと来てしまうのですが、ヒーロー姿になっての活躍はまさに痛快そのもの。
読めばすっかり、やくみファンになってしまいますよ。
意地悪を言っていた果物や野菜のみんなも、そのままではありませんから、ご安心くださいね。
レモンちゃんも、ぶどうくんも、まわりと違ってもそれはそれぞれの個性。
「いろいろなお友達がいるんだね」と、絵本から多様な個性を受け入れられるといいですね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。