夏休みにおすすめ。スマホネイティブの子どもにあえて「使い捨てカメラ」の体験を【ママカメラマンのスマホ写真術・1】
みなさん、初めまして。カメラマンの成田由香利と申します。9歳と7歳の息子二人の母です。
出産や育児にまつわる雑誌の撮影を中心に活動していますが、今回、スマホカメラで子どもを撮るときのアドバイスをお伝えする連載をスタートすることになりました。
プロカメラマンとしては珍しいかもしれませんが、子どもが誕生してから割と最近まで、仕事のときと家族の記念日以外の日常のほとんどを、スマホカメラ(もちろんケータイカメラの時代もありました!)と手のひらサイズの小さなコンパクトカメラで撮ってきました。
息子たちが小学生になった今でこそプライベート用の一眼レフで撮る機会も増えましたが、息子たちが小さかった頃は、大きなカメラを持ち歩く余裕なんてどこにもなく、必然的に写真を撮るならケータイで、となっていました。
今回の連載を始めるにあたり、ケータイの写真を9年前の長男誕生まで遡って見直してみたのですが、膨大な写真の中に、忘れかけていたかつての日常の生活の他愛もないひとときやうっかり撮れた面白い瞬間がそこにたくさん収まっていて、当時のことを色鮮やかに思い出しました。
一眼レフの、神聖さが漂うようなきっちり綺麗な写真もいいけれど、ケータイカメラだからこそ残せる雑多な空気感の写真も味があっていいなぁと今さらながら感じました。
SNSを利用する機会が多くなった今、すでに皆さん、スマホカメラで写真を存分に楽しまれていると思うのですが、私からは、皆さんの楽しみ方に簡単に取り入れられるちょっとしたスパイスになるような、お子さんの写真の撮り方、残し方をアドバイスできたらなあと思っています。これからしばらくの間、どうぞよろしくお願いします。
スマホネイティブの子どもにあえて「使い捨てカメラ」の体験を
さて、いまが夏本番。夏休みに旅行や帰省の予定のある方、たくさんいらっしゃると思います。
初回からいきなりスマホカメラから離れるのですが……、夏休み版ということで、旅先で親子で楽しめる写真体験をご紹介したいと思います。
スマホでお子さんの写真を撮っているときに、「貸して」と言われて、お子さん自身が写真を撮る機会も時々はあるのではないでしょうか。産まれたときからスマホがあるデジタルネイティブ世代の子どもたちは、感覚的に端末を使いこなし、そして、とにかく撮られることにとても慣れています。成長につれて写るだけでなく、撮ることにも興味を持つようになるのは、自然な流れなのかもしれませんね。
スマホカメラはタッチするだけで無限に撮れてしまうもの。撮れた写真をその場で確認しながら、うまく撮れるまでチャレンジしたり、連写をして楽しむことが簡単にできますし、それが子どもたちにとっては当たり前のこととして馴染んでいると思うのですが、夏の思い出に、ここではあえてアナログな使い捨てフィルムカメラを利用した写真体験をオススメしたいと思います。たとえば一泊二日のような短い旅行の際にぜひ試してみてください。
「お母さん、これどこで撮った写真見るの?」と、予想通りの質問が
我が家の子どもたちにもこの体験は何度かさせていて、初めて使い捨てカメラを持たせたのは、長男小学一年生、次男が年中さんのときのことでした。奈良旅行二泊三日だったかな。奈良の大仏や鹿公園など、観光名所がいっぱいあるし場所として面白いから、体験させるならもってこいだなあと思ってのことですが、子どもたちの様子は、親の目線からも、カメラマンの目線からもとても興味深いものでした。
「写ルンです」のような使い捨てカメラはまるでプラスチックのおもちゃのようで、子どもたちは自分用のカメラを渡されたこと自体がとても嬉しそうでした。すぐ取り出せるように、ストラップをつけ首からぶら下げて旅はスタートしました。
新幹線のりばでさっそく一枚目を撮ろうと息子たちはカメラを覗くわけですが、顔が曲がりそうなくらい必死で片目をつぶって、プラスチック製の小さくなファインダーを覗く姿がもうおかしい。ファインダーからの視界が狭いことに驚きながらも、一枚撮ろうとシャッターを押すのですが、今度は押し込む力が足りなくてなかなか撮れません。苦戦しながら一枚撮れたあと、「お母さん、これどこで撮った写真見るの?」という、予想通りの質問が飛んできました。
「これは、27枚全部撮り終わってから、お店に写真が見られるように現像をお願いするんだよ。だからちゃんと撮れているのかどうかは後でのお楽しみ」と伝えると「えー! そうなの!?」と、とてもとても驚いていました。
力を込めてシャッターを押し、次の一枚を撮るためにジリジリとネジを巻き上げているうちに撮っている実感が湧いてくるようで、「ちゃんと撮れているかな。次はあれを撮りたいな。でもあと何枚撮れるかな」と気になるものに目を凝らし、どっちの方向から撮ろうかなと考えていました。
長男は、27枚を旅行の間、どう配分して使うかをひたすら悩み、撮りたいものを発見してもいちいちためらっていましたが、次男は小さかったこともあり、果敢に、撮りたいと思ったものに近づき、パシャパシャと撮っていました。
お子さんの年齢によっては、撮ることよりもカメラの構造自体に面白みを感じて、よく考えないままに押しては巻き上げてを繰り返してしまうかもしれませんが、そういった場合は、パパやママが何を撮ろうか一緒に考えながら歩いたりするなどフォローしてあげるといいかもしれませんね。
撮った写真はお子さんの興味がストレートに見えて面白いです。思い出を形として残すことは、記念にも印象にも残るので、今までの旅行とまた違った経験になることと思います。
子どもたちにとって、いつもは、スマホの大きな画面に映し出される世界が、使い捨てカメラの小さくて狭いファインダーから覗くことで、いつもと違う見え方をすることは間違いなく、狭いからこそ、何を撮ろうか選ぶことが必要になってきます。よく考えよく観察し、カメラを構える、そんな一生懸命なお子さんの姿もまた可愛らしいので、ぜひお手持ちのカメラで撮ってあげてくださいね。
きっとパパやママも写真が仕上がってくるのが待ち遠しくなると思いますよ。面白い写真があったら、プリントしてお部屋に飾るのも楽しいと思います。
最後に、使い捨てカメラを使用される際のちょっとだけ細かいアドバイスを。使い捨てカメラは基本的に晴天以外の明るさには弱いので、曇天や室内で使用する際は、カメラに付いているフラッシュを使って撮るのがおすすめです。ただし、フラッシュ禁止の場所もありますのでご注意くださいね。また、複数のお子さんに使い捨てカメラを持たせる場合は、必ず使い捨てカメラ本体に記名し、誰がどのカメラで撮ったのかがわかるようにしてください。撮った写真が見えない分、これは意外と重要。カメラ屋さんに現像をお願いするときも、誰がどのカメラで撮ったかわかるようラベリングしてもらうことをお忘れなく。
夏休みの思い出が新しい経験によって、より鮮やかになるよう願っています。
今週の一枚
この連載で私のプロフィール写真が必要ということでしたので、今回、あえて息子たちに撮ってもらいました。この写真はその様子を私が携帯で撮ったものです。
身近な人に撮ってもらうとリラックスし、意外な一枚が撮れるものです。パパやママが撮ったお子さんの写真に敵うものはありません。
それではまた次回。
なりたゆかり/カメラマン。1980年生まれ。秋田県出身。大学在学中に写真にめざめ、夜間の写真学校に通い学ぶ。その後六本木スタジオ勤務を経て、回里純子氏に師事、2008年に独立。小学3年と1年の息子二人の母。主に雑誌の撮影で幅広く活動中。
Instagram @naritayukari_p