2019年3月18日

『おむかえ』【今日の絵本だより 第39回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『おむかえ』
ひがしちから/作 佼成出版社 本体1300円+税

3月も後半、そろそろ入園・入学シーズンですね。
今回から3回連続で、保育園、幼稚園、小学校の絵本をご紹介します。
まずはこちら、保育園に入園したての男の子のお話、『おむかえ』です。

こたろうくんは、保育園に入ったばかりです。
朝、お母さんとバイバイしたら、早速泣き出してしまいました。
先生が優しく声をかけても、泣きやみません。
みんなが外で遊んでいても、木のかげにしゃがんで泣いています。
給食中も、机につっぷして
「おかあさんが いい……」
と泣いています。

入園前にこんなお話を読んだら、保護者は心配になってしまうでしょうか。
胸がきゅーっとなるでしょうか。
でも、長く保育園にお世話になった身からすると、この絵本には、入園直後のそのままの風景が描かれていると思います。
突然知らない場所で過ごすことになって、小さな胸は不安と混乱だらけ。
今まで通り、お母さんと一緒がいい。
そうだよ、そうだよね。
入園話は遠い記憶になった自分でも、毎年4月の泣き声の大合唱を思い出し、涙が出てきてしまいます。

でも。
給食後、誰よりも早くお昼寝のお布団に入ったこたろうくん。
起きたらまた、泣いちゃうかな?
それは、ぜひ絵本を読んで、確かめてください。
そして、お母さんがおむかえに来たときの、こたろうくんの言葉を聞いてください。
子どもの心も、ずうっとどしゃぶりばかりじゃない、何かのきっかけで晴れ間ものぞく。
もし入園前にこの絵本を読んで心配になっても、半年後、一年後に読んだら、きっと印象が違うでしょう。
こたろうくんを笑顔で見守る先生、気にしてくれているお友達、見えなかったものが見えてくるはず。
泣きたいときは泣いて、笑いたいときは笑って、ありのままでいる場所が保育園。
今はこんなに泣いているこたろうくんも、きっとしばらくしたらみんなと遊ぶようになって、いつか「おかあさん、もうおむかえにきちゃったの!?」と言う日も来るんだろうなあ。
うん、絶対来る。

今は不安ばかりでも、今日より明日、明日よりあさって、子どもは必ず成長する。
そんな予感を、希望の種を、与えてくれる一冊です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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