姿勢が悪い、よく転ぶ……。遊びの中で運動能力をアップさせる方法【保育士さんの「育児のウラワザ」vol.7】
自転車が乗れるようになるには、訓練が必要?
――自転車もバランス感覚が必要ですが、体幹のある子のほうが上手なのでしょうか。うまく乗れるためにできることはありますか?
堀内:確かに、自分の体のバランスの取り方がわからない子は、自転車が苦手な傾向があります。自転車に乗る動きを分解すると、バランスを取るために必要な「乗る」動きと、自転車を操作するために必要な「つかむ」「こぐ」動き、この3つの動きが組み合わさったものです。小さい頃は、自分でバランスを取る感覚として、肩車をしてあげるのもいいですよ。同じように、イスに座った親の膝の上に、子どもを座らせて足を揺らす遊びもあります。そうすると、自分でバランスを取りながら、肩の上や足の上に「乗る」動きを習得していきます。体重が重くなると、親が辛くなりますが(笑)。次の段階として、足で漕いで進むような4輪の幼児車に乗るのもいいと思います。その次に三輪車、それからストライダー。ハンドルを「つかむ」、足で「こぐ」動きそのものが経験になりますし、脚力がつきます。ストライダーは両足が少し浮いて進むので、バランスを取るために理にかなった乗り物ですね。これがあると、自転車に移行しやすいです。
スポーツクラブに入れても運動能力が高くなるとは限らない
――幼児期に、運動神経がないから少しでも体を動かそうと、スポーツクラブに入れようという親御さんもいらっしゃいます。
堀内:体を動かすひとつの機会としては良いと思います。でも、スポーツクラブに入れば運動能力が高くなるとは限りません。日本のスポーツクラブは、サッカーや野球のようなひとつの専門スポーツに特化して取り組むものが多く、「蹴り方」「打ち方」といったような特定の訓練を強化する傾向が強いので、経験できるスポーツや動きにかたよりが生じやすくなります。でもサッカー選手として大成した人は、子どもの頃、サッカーだけでなく、陸上やバレーボールなどを同時にやっていた時期があるというマルチな人が多いんですよ。いろいろな運動・スポーツに親しんでいて、動きの引き出しが多いんです。
幼児期には複数の運動・スポーツに親しむ中で「体を動かすことが好き」になってほしいですし、「多様な動きを習得」したほうが、生涯にわたって運動・スポーツを楽しめるのではと思います。それにはスポーツクラブに入ることも一つの選択肢ですが、親子やきょうだい、友達と体を動かして遊ぶことで十分経験できることだと思います。
――親子で体を動かすときも、強制的な練習というより遊びながら、とおっしゃっていましたが、そういう遊びの引き出しはどんなふうに増やしていったらいいですか?
堀内:ポイントは3つあります。よくコミュニケーションを取ること、何かにチャレンジしてみること、クリエイティブに考えられること、その3つの要素を遊びの中に取り入れることです。
【コミュニケーション遊び】
競争や協力、触れ合いや伝承遊びを、子どもと一緒に楽しんでみてください。かけっこやお相撲などで、どっちが速い?どっちが強い?と親子で競争したり、子どもをだっこして、お互いが落ちないよう、落とさないように一周回ってくる遊びをしたり。パパママが子どもの頃遊んだ、ジャンケングリコやおうちでかくれんぼをするのも楽しいですよ。
【チャレンジ遊び】
できることより、ちょっと上のことをやってみます。たとえば、パパママの腕に5秒ぶら下がれたら、次は10秒ぶら下がっていられるかな? などの声かけをして挑戦していきます。大人の腕を鉄棒にして、逆上がりしても楽しいですね! 少し背伸びしたことに挑戦したり、できなかったことができるようになることで、子どものモチベーションが高まります。
【クリエイティブ遊び】
⼦どもが⾃分でどんどん考えていく遊びです。トンネルのくぐり⽅を何種類⾒つけられるかな? といったような声かけをすると、子どもはいろんな動きを見つけて遊びます。また、オリジナルの紙飛行機やボール作りを研究してみるのもいいですね! こうした遊びや動きを工夫したり、新たに見つけたり、考えたりして作り出すことが、子どもに楽しさを感じさせてくれます。
私はこれらを3C遊び(Communication、Challenge、Creative)と言っていて、関わること、挑戦すること、考えることを通して、運動をおもしろいと感じる「心」を育てていきます。遊びに夢中になり、こうした心を子ども自ら育てることが、運動能力をあげる上でとても重要なことなんですよ。
POINT:
・乳幼児期にすぐベビーカーに乗せるより、ハイハイさせたり、歩かせることで体幹が育っていく!
・専門スポーツの強化より、遊んでいろんな動きをまんべんなく体験させるほうが運動能力は高まる
・親が一緒に遊んであげて、体を動かす心地よさをいっぱい味わせてあげて
・子どもがチャレンジしたり、協力したり、工夫する遊びなど、運動をおもしろいと感じる「心」を育てよう
次回のウラワザは「トイレトレーニングを教えて!」です。お楽しみに!
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取材:日下淳子 イラスト:山川あかね |