2018年9月8日

『ひらがなにっき』【今日の絵本だより 第2回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

連載【第2回】今日の絵本だより『ひらがなにっき』の画像1『ひらがなにっき』
若一の絵本制作実行委員会/文 長野ヒデ子/絵 解放出版社 本体1900円+税

 

9月8日は、国際識字デーです。
私たちにとっては、「文字を読み、書ける」というのはあたりまえの感覚ですよね。
今の子どもたちなら、入学前から文字の読み書きができていることも。

でも、『ひらがなにっき』の主人公のかずこさんは、学校に通ったことがないので文字がわからず、60歳を越えてから、地域の識字学級で字を習いはじめました。
これは、かずこさんがようやく書けるようになったひらがなでつづった日記です。
かずこさんは1925(大正14)年生まれ、kodomoe読者のママには、おばあちゃんにあたる世代でしょうか。
それほど遠い昔の話ではありません。

識字学級で字を勉強したら、その字が逃げないように手に書いて、にぎりしめて家に持って帰るかずこさん。
それでも漢字は難しくて、自分の名前が漢字で書けないために、銀行でお金がおろせないという目にもあいます。
せつない場面もありますが、長野ヒデ子さんの人情味あふれる絵からは、かずこさんの前向きな頑張りが、からっと伝わってきます。

お話は、お孫さんへのお手紙でしめくくられます。
「おばあちゃん じぶんで
なまえを かけました。
かんじ かけました。
また へんじ ください。
?田一子」

今現在も世界には文字が読めない人が多くいて、子どもに本を読んであげられないママも大勢います。
本どころか、文字が読めないと、手にしたビンにある文字が「毒」か「薬」かもわからない、それが日常である親子も多いのです。

『ひらがなにっき』のように、今まで知らなかったことに気づかせてくれる、言葉だけで説明するには難しいことをすっと自然に教えてくれる、それも絵本の素敵なところだと思います。

次回は敬老の日にちなんだ絵本をお届けします。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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