2016年12月28日

12月のテーマは「待ち遠しい絵本」【広松由希子の今月の絵本・58】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

12月のテーマは「待ち遠しい絵本」

もういくつ寝たら、くる?
今年もカウントダウンが刻々と。

お正月やイベントに限らず、
冬は、なにかと待ち遠しい季節。
雪が降るのが楽しみだったり、
やがて春が恋しくなったり。

待ち遠しいって、
楽しくもあり、
せつなくもあり、
あたたかくもあり。

いろんな待ち遠しい気持ちがふくらむ絵本を
ひっぱり出してきましたよ。

12月のテーマは「待ち遠しい絵本」【広松由希子の今月の絵本・58】の画像1

ケーキの上では年中見るけれど、
自然の『いちご』は、冬をこらえて
あたたかくなるのを待っています。

地面の上、葉っぱだけの姿で、
「わたしは いちごです」
「わたしも いちごです」

と、いちごのつぶやきは、赤い文字で書かれています。

「いちごは どこにあるの?」
読者の気持ちが、黒い文字で綴られると、

「いちごの み は あたたかくなったら なりますよ。
それまで まっていてね。いまは、まだ さむいふゆです」

いちご自身が、応えてくれます。
さりげない自然との呼応に、引き込まれます。

あたたかくなって、
つぼみができて、
花が咲いて…
「もうすぐ いちごが なりますよ」

小さないちごが、だんだん大きくなってきた…
でも緑のいちごは、まだまだ酸っぱいから…
ああ、もっと赤く、もっと甘く…
大好きな果物の育ちを学びながら、
待ち遠しさが、かきたてられる絵本です。

「おまちどおさま。さあ どうぞ」
みずみずしい、最高においしそうな絵に、感謝していただきます。

12月のテーマは「待ち遠しい絵本」【広松由希子の今月の絵本・58】の画像2

『いちご』
平山和子/作 本体900円+税
福音館書店 1989

 

 

待ち遠しすぎて待ちきれない!
行動派の女の子とおばあちゃんの『はやくあいたいな』。
五味太郎さんの初期絵本です。

画面左、丘の上の赤い屋根が、よおちゃんの家。
画面右、山の上のオレンジ色の屋根が、よおちゃんのおばあちゃんの家。

ある日、よおちゃんは急におばあちゃんに会いたくなって、バスで出かけます。
同時に、おばあちゃんも急によおちゃんに会いたくなって、電車で出かけます。

お互いの家に着いて、すれ違いに気づきます。
しまった! びっくり!
ふたりして、あわてて帰るから、またもや、
びっくり! しまった!

会いたい気持ちがはちきれそうな画面。
じっと待ってなんかいられない。
横長の見開き画面をめいっぱい使って、行ったり来たりの行き違いがゆかい。
いつふたりは会えるのか、つのる想いがはじける、最高のラスト。

12月のテーマは「待ち遠しい絵本」【広松由希子の今月の絵本・58】の画像3

『はやくあいたいな』
五味太郎/作 本体1300円+税
絵本館 1979

 

 

どんなに待ち遠しくても待つしかない、
『かあさんを まつ ふゆ』。
遠い街へ出かせぎに行った母の帰りを待つ
少女の気持ちが、ひたひたと胸に沁み入る絵本です。

「せかいじゅうの なによりも あんたが 大すき。
わかってる?」
母さんは、娘になんども言って、出かけていきます。
「シカゴでは、こくじんの 女でも やとってくれるんですって」

それきり音沙汰のない母さんを、娘は、おばあちゃんとひたすら待ちます。
せっせと手紙を書いても、母さんからは返事もお金も届かない。
降りしきる雪を見ながら、
「ゆきよりも 大すき」と言っていた母さんの言葉をなぞり、
母さんのにおいを思い出そうとします。

戦時中。外からの情報は、ラジオと
郵便屋さんが運んでくる手紙だけ。
終わらない戦争、帰れない兵隊さんのことを思い、祈ります。
力仕事に励む女たちのことを考え、そこにいるはずの母さんを想います。

深い想いをたたえた水彩画。
ひと冬の、しんと待つ時間が、
女の子の想う力をきたえ、心の芯を強くします。

12月のテーマは「待ち遠しい絵本」【広松由希子の今月の絵本・58】の画像4

『かあさんを まつ ふゆ』
ジャクリーン・ウッドソン/文 E. B. ルイス/絵 さくまゆみこ/訳
本体1400円+税 光村教育図書 2009

 

 

今はできなくても、
「いつか someday」を想うことはできます。
『いつかはきっと…』は、
女の子の待ち遠しい「いつか」がつまった絵本です。

「いつかは ね……」で始まる、願望が次々と。
バレエのおけいこでほめられる。
どんなボールでも受け止める。
大金持ちになってみんなにプレゼントして「どういたしまして それっぽっち」って言う。
枯れ木に水をやると、みるみる生き返ってピンクの大輪の花が咲く。
すすんで早寝して、パパとママにびっくりされる…などなど。

少し大きくなったらかないそうな願いも、
とほうもなく大きな夢も、
今ではない「いつか」ということでは、いっしょ。

しあわせな「いつか」を想う力が、
日々のエネルギーになります。

ゾロトフの文とローベルの絵が、
おちゃめにユーモラスにほほえんで、子どもをくるんでくれます。

12月のテーマは「待ち遠しい絵本」【広松由希子の今月の絵本・58】の画像5

『いつかはきっと…』
シャーロット・ゾロトウ/文 アーノルド・ローベル/絵 やがわすみこ/訳

本体900円+税 ほるぷ出版 1975

 

 


できそうもないことが、できちゃうかもしれない。
起きそうもないことが、起きちゃうかもしれない。

待ち遠しい願いがかなう、新しい一年になりますように。

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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